インタビュー「3DCG制作のツール」【8K文化財プロジェクトの制作現場:スピンオフvol.03】
— 株式会社アフタイメージを起業してからの仕事は?
成田さん 最初の頃はね、会社を作ったはいいものの、あまり自分たちのスキルを活かせるような仕事がなかなか無かったです。そんなとき、登場したばかりだったフォトグラメトリー(写真計測)という技術を趣味でやってみて、「これマッピングに使えるね」と。それでいくつかの案件を手掛けました。
NHKホールのリアリティーキャプチャーとか。今は新しくなったのですが、当時は歴史が古いホールで、3DのCADデータなんかは存在しなかったんです。
高嶋さん NHKホールは、写真計測の案件としては一件目ですよね。
成田さん そうだね。これをきっかけに、ほかの仕事をいただけたりもして。うん、手探り状態だったね。
このときは、Softimageというソフトで3Dデータを作っていて、今はもう開発終了しちゃってるんですけど。使うソフトもどんどん変わっていくんですよ。3Dのソフトウェアって、習得にすごく時間がかかるんです。単純なモデリングだと大したことはないのですが、それを動かす仕組みまで作ろうとすると、いろんなスキルが必要になる。
だから、最初に携わったソフトから、みんな離れたくないんですよ。まあ、僕の場合は開発終了していたソフトをずっと使い続けていたんですけど。よくできていたので。
— 今もまだ?
成田さん さすがにもう、サポートも終わっちゃったので、今モデリングに使っているのはFoundryのMODOとMARIです。ハリウッドではよく使われているソフトです。映画『ロード・オブ・ザ・リング』や『アバター』のVFXスタジオとして有名なWeta Digitalの内製ツールをFoundryが受け継ぎ、開発を進めているソフトなんです。
映画『アバター』は、IMAXで上映することが前提だったので、凄まじい解像度でキャラクターが作られたと聞いたことがあります。そのためMARIが使われたということですが、高解像度の3Dペインティングソフトとして現在でも一番優秀なんじゃないかと個人的には思っています。
あとは、ZBrush。スカルプティング(デジタル彫刻)のソフトウェアです。
— とてもたくさんの種類がある……
成田さん 最近は、ひとつのソフトウェアで完結させる時代じゃなくて、いろんなソフトを使いながら、最後はパイプラインに特化したソフトに集約させる、という感じが多いですね。だから、3DCG制作において「モデラー」と呼ばれている人たちのなかでも、使っているソフトウェアは本当にさまざまです。
Blenderという無料のソフトウェアを好んで使う人もいますし、でもまあ、それだけ使う人というのはほとんどいなくて、Mayaとか、Adobeの Substance Designerとか、そういうものを組み合わせて作ったりしていますね。
Substance Designerは、質感をつけるソフトウェアなんです。それまではフォトショップとかでテクスチャを作る時代でしたが、3D上でペイントすれば質感になる、そういうソフトウェアです。
インタビュー:岡田麻沙