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世界が注目!ラスベガスの球体型アリーナ「Sphere」現地レポート #1 【構造・アトリウム・外壁映像 編】

先日、私たちBASSDRUMのテクニカルディレクターであり、ビジュアルアーティストでもある中田 拓馬が、世界中で話題となっているラスベガスの球体型アリーナ「Sphere」(スフィア)をいち早く見学してきました。本日はそのレポートをご紹介します。

【 Sphereとは 】
2023年9月にラスベガスにオープンした巨大な球体型のコンサート施設。高さは東京ドームの約2倍にあたる111.5メートル、幅は150メートル。球体構造の建造物としては世界最大となる。座席数は約1万8000席で、総工費は約3400億円。外観には世界最大となる5万4000平方メートルのLEDスクリーン、内部には解像度16Kの1万5000平方メートルのLEDスクリーンが設置されている。こけら落とし公演として、伝説的バンドU2による「U2:UV Achtung Baby Live At Sphere」が来年2月まで開催されている。

Hello! Sphere

LAで開催されたAdobe Maxの視察を終えた後、同僚の「LAにいるなら見に行ってきたら?」の声に背中を押され、急遽ラスベガスに向かったのが10月某日。事前リサーチもないまま、午後2時過ぎに着陸した飛行機の窓から最初に見えたのが、Sphere公式SNSでEmoji(絵文字)として紹介されている、この黄色い顔のコです。

見えた瞬間の動画はこちら

初見の感想は、単純に「かわいい」と、3000ルーメン程度のプロジェクターで室内に何かを投影しているくらいに「色が薄い」ということでした。しかし、この感想は後にどんどんアップデートされていきます。

滞在先のザ・ベネチアン・リゾートに向かう途中、タクシーから改めて見たSphereは噂通りに巨大でした。ラスベガスは全てが巨大な街ですが、その中でも動きのある珍しい建築物なので、かなり目を引きます。タクシーの運転手さんによれば、最近はSphereを目的にラスベガスを訪れる人も多いとか。

近づくにつれ、その大きさに圧倒される

外壁の意外な構造

今回滞在した部屋は「Sphere View」というプランだったため、部屋の窓からもSphereがはっきりと見え、外壁に透過型のLEDスクリーンが使われていることが分かりました。これは、SNSで見ていた時とは全く異なる印象です。また、日が暮れるにつれ、その光の強さが明らかになっていきました。

Sphereは一つの大きな構造体のような気がしていたのですが、LEDの外壁はファサードとして建築されていて、その内部に潰れた丸のような形の構造体が存在しているのが見えました。

実際に現地に足を運び、至近距離で見てみると、外壁は無数の円形LEDモジュールで覆われていました。ひとつの直径はおそらく25センチ程度で、かなりの大きさです。背面には放熱するためのヒートシンクのようなものが付いていて、それが鉄のバー上に22、3個ほど並べられ、モジュールとモジュール間の隙間を目立たせないよう、互い違いに設置されていました。また、遠くからは完璧な球体に見えるSphereですが、実際は角ばった多面体のような形状であることが分かりました。

外壁を覆う無数のLEDモジュール(左)とやや角ばった表面(右)

ラスベガスの夏はモンスーンで雷が多いらしく、多数の避雷針が設置されているのも見えました。避雷針があるからといって落雷でLEDが故障しない訳ではないと思うのですが、被害を最小限に抑えるための対策なんじゃないでしょうか。

よく見ると避雷針が多数設置されている

内側にも様々な機材が設置されていました。これらの機材がLEDの制御用なのか、それとも違う目的のものなのかは確認できませんでしたが、とにかく全体的に圧巻の構造体でした。

LEDの背後には何かの機材や複数のケーブルも

下の画像は、LEDが点灯していない、いわゆるドット落ちの部分です。LEDモジュールのバーがおそらく一列丸ごと機能していないようで、どのように修理するのかが気になり、写真を撮っておきました。

一列だけ消えているLED

未来感溢れる豪華なアトリウム

内部は7階建てになっていて、1階と2階にエントランスがあります。2階エントランスは隣接するザ・ベネチアン・リゾートに直結する通路からアクセス可能で、混雑しがちな1階エントランスよりもスムーズに入場できるようです。2階エントランスから中のアトリウムに入ると、すぐに物販スペースがあり、多くの人で賑わっていました。

右がザ・ベネチアン・リゾートに直結する通路

2階、4階、5階へはエスカレーターやエレベーターで上がることができますが、それ以外のフロアはVIP専用になっていて、一般客は行くことができません。

中田によるおおよその図面。左はコンサートホールとその席番号。右がアトリウム。

アトリウムはフューチャーリスティックなデザインになっていて、各階の天井高、統一された世界観、そしてその豪華さに圧倒されました。天井から吊り下げられた大きな輪(下の画像:左)の内側には、スリット部分のみにLEDストライプが付いていて、控えめに光る様がとても綺麗でした。これが数え切れないほどあるので、かなりのコストがかかっていることが容易に想像できました。

アトリウムの様子(動画はこちら

上の中央の画像は、3Dホログラムファンでできたスクリーンです。隙間を埋めるようにファンが前後互い違いに設置されていて、一枚の大きな面になっていました。なぜ3Dホログラムファンを使ったのか気になりましたが、見栄えの良いものに仕上がっていました。

圧倒的存在感を放つ多彩な映像コンテンツ

外壁に流れる映像は幾つもの種類がありました。日中に見た絵文字のキャラクターは、顔が2つあり、飛行機からはよく見えますが、ホテルの部屋からはあまり見えないようになっていました。その代わり、ホテル側を含む4面と上部を正面にしたような、地上と上空のどちらからでも見える映像もありました。

深夜に流れていた動く目玉の映像は、かなりグロテスクではあるものの、見る楽しさはありました。

Sphereの中に閉じ込められた人が外に出られずもがいているような映像は、夜に見るとかなり不気味な感じがしましたが、実はこれは、自分が一番興味を持った、唯一白色が出る映像コンテンツです。周囲に与える光の影響を考えながら床面を見ていたんですが、その光の強さに驚かされました。

午前3時頃、カーテンを開けたまま寝ようとしたんですが、眩しすぎて全然眠れなかった(笑)。映像は、おそらく24時間流れているんじゃないかと思います。

カーテンを開けて寝ようと試みる

自分はアーティストとしても活動しているので、いつか関わることもあるだろうと、Sphereの存在を知っても積極的に情報収集するようなことはしませんでした。しかし、実際現地に足を運んでみると、このピクセル感ならこういう映像が映えるとか、どこからどう人が見るのかとか、動画では分からないことを色々と体感でき、得るものも多く、とても良い経験になりました。

レポート第二弾【U2 ライブ演出編】へ続く