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【Captury】モーションキャプチャーをテクニカルディレクターが一気にレビューしてみた:第十回 後編

前編ではCapturyを総合的な観点からレビューしました。

後編ではより詳細に見ていきます。
それではどうぞ!

※本記事の情報は全て2024年9月現在のものです。



精度

★★★★☆

検証環境:
・PC
  ・GPU:GeForce RTX4090
  ・CPU:Corei9
  ・メモリ:32GB
・PoEカメラ(ACT-CAP-FLIR16)

今回検証した動きは以下となります。

  • バンザイ

  • 腕組み

  • ボックスステップ

  • ジャンプ

  • 床座り(あぐら)

  • 床座り(体育座り)

  • 床座り(正座)

  • 椅子座り(立ちから座り、座りから立ちまで)

総合的に見て、リアルタイムのキャプチャ用途においても十分かつ映像用途としても使用に問題ないレベルの精度に思えます。

光学式にかなり近い精度を叩き出しており、ノイズ的なブレもほぼ確認出来ません。安定していて滑らかな印象を受けます。
ただカメラからモーションを推定している都合上、体育座りなど身体のパーツが隠れる動きは体の一部が崩れやすい印象です。(光学式と同様の課題)

毎フレームAIで推定しているという仕組み上、モーションキャプチャで発生することの多いドリフト(足の滑り)が発生しません。
AI推定で行っている強みの一つと言えるでしょう。


遅延

★★★★☆

  • 約250mS(約 0.25 秒 / 本環境の場合)

映像を取り込んでからモーションを推定するという仕組み上、若干の遅延が発生します。
モーションを見ながら動くアクター側の目線では、若干のディレイ感は感じるものの自身の動きに影響が出るほどではないように感じました。

設定するフレームレート・カメラの解像度・カメラの台数によっても処理にかかる時間が変わってくるため、気になる場合にはカメラ側のスペックを見直すことでも改善が見込めます。

AI推定というジャンルで見るとリアルタイムに対応しているものがそもそも少なく、またこれだけの精度をもっていることも踏まえると十二分の処理速度といえるでしょう。


手軽さ

★★★★☆

  • 必要設備:

    • PoEカメラ

      • システムとして台数に制限は無し。

      • 全身のモーションを収録する場合には6台以上を推奨。
        (4台ほどでも録れないことはない)

    • Captury動作用PC

      • 推奨メモリ:32GB以上

      • GPU:RTX3000番台以上

  • 最低限必要なスペース:最低3m×3mの何も配置されていない空間

  • 必要人数(アクター含め):2

  • セットアップにかかる時間
    (モーションキャプチャーが可能になるまでの時間)

    • レンズキャリブレーション(カメラレンズ歪み校正):10 分
      (新規にカメラを使用する場合のみで良い)

    • ボリュームキャリブレーション(カメラ相対位置校正):5 分

    • アクターキャリブレーション:1-5 秒

機材周りに関しては、光学式のVICON / OptiTrackなどとほぼ同様の準備工程となります。
マーカーレスモーションキャプチャーである為、スーツを着る工程は必要としません。大きな長所の一つと言えます。

move.aiなど同じマーカーレス系も含む他のモーションキャプチャーシステムと大きく異なるのはアクターのキャリブレーション速度で、アクターがキャプチャエリアに入ってからモーションの取得が可能になるまで僅か1-5秒という驚きの数字を見せました。
特定のキャリブレーション用動作/ポーズなども必要とせず、Capturyオペレーターが対象アクターの場所を指定してアクターが軽く体を動かすだけでボーンの生成・モーション情報の送信が開始されます。


〇 レンズキャリブレーションについて

  • レンズ歪みを補正するキャリブレーションの為、実際にカメラは配置せずに行うことが出来ます。

  • 理論上はカメラ・レンズが同じであれば同じデータを使用することが可能です。

  • キャリブレーションボードは自作のものを使用することが可能です。
    (厚みがあり、歪まない台紙などが推奨されます)

レンズキャリブレーションに使用するキャリブレーションボード


〇 使用PCの推奨構成について

  • AI推定処理をGPUで行っているため、GPUのスペックを上げるほど遅延の低下に効果があります。

  • CPUはCapturyにおいてはあまり使用しておらず、極端にハイエンドなものを選定する必要はありません。

  • データのリアルタイム書き込みに際してフレームが落ちることがあるため、高スペックのSSDを使用が推奨されています。


〇 カメラについて

  • Capturyでの使用において、VICON・OptiTrackのように指定のカメラは存在しません。

  • CapturyLiveを使用してリアルタイムにモーションを取得する場合にはPoEカメラを使用する必要があります。

  • 解像度は1080pが推奨となります。解像度がモーション推定にかかる処理速度に直結するため、特別な事情が無ければ4Kでの撮影は避ける方が良いでしょう。

  • Capturyでのフレームレートはカメラのフレームレートに依存します。その点も含めて選定するのが良いでしょう。


他ソフトとの連携

★★★★★

Unity・UnrealEngine・MotionBuilderと一般的に用いられるソフトウェアにはプラグイン対応しています。
Unityはサンプル用のプロジェクトも公開されているため、導入が特にしやすいソフトだと言えます。

他にプラグインを自作するためのSDKも公開されており、自作ソフトウェアにCapturyを対応させることも可能です。
収録データは、csv・c3d・bvh・fbx など一般的な形式には一通り対応しています。

公式対応ソフト:
- Unity
- Unreal Engine
- Motion Builder
- Matlab


価格

★★☆☆☆

  • 購入価格(ライセンス購入):
    ※指・表情の取得はオプションとなります。

    • Captury Live(リアルタイム版):¥ 3,850,000

    • Captury Studio(ポストプロセス版):¥ 1,650,000

  • ランニングコスト(ライセンス更新):

    • Captury Live:¥ 1,600,000

    • Captury Studio:¥ 650,000

※アカデミック向けはサブスクリプション無しで購入が可能です。


光学式のモーションキャプチャーほどではないものの、個人での購入にはなかなかハードルが高い価格となっています。
ライセンスの年間更新費用も決して低価格とは呼びづらく、導入の際には運用スケジュールも踏まえて検討する必要があるでしょう。

カメラに関しては、VICONやOptiTrackのように指定されているカメラが無いため、予算に応じて調整がしやすい要素であると言えます。

ライセンスはアクティベート式で、アクティベート時にライセンスサーバに認証しに行くという方式になっています。
そのため、一度アクティベート出来ればオフラインでも使用が可能です。


またAcuity社はレンタルにも対応しており、オペレーター含めてのプランが提供されています。

〇 Captury Live(リアルタイム版)
・Acuity Studio でのオペレーション :¥500,000(4時間)
・Acuity Studio外 でのオペレーション:¥800,000(4時間)
※設置時間を除く4時間・作業者2名を前提とします。

・時間追加:¥100,000 / 1時間
・フィンガーおよびフェイストラッキングオプション:¥50,000

※早朝(9時以前)は特別料金として25%増、深夜(19時以降)は特別料金として50%増となります。

〇 Captury Studio(ポストプロセス版)
・データ解析 ポスト処理での作業費/時間¥12,000(1時間)

その他

  • 指・表情の取得が可能(オプション)

    • 表情データはcsvデータでの出力となります。

  • キャプチャ可能人数(ハイエンドPCの場合)
    ※ソフトウェアとしての人数制限は無く、リアルタイムで使用する場合の推奨最大人数を示しています。

    • 指あり:最大4人ほど

    • 指なし:最大8人ほど

  • 指定のARTagを貼り付けることでオブジェクトトラッキングが可能です。

  • ある程度のカメラ揺れであれば補正することが可能です。

    • クラブ環境での使用実績アリ

  • 一度キャプチャエリアから出ると戻った際に再認識がされにくいです。
    (アクターごとの識別は不得意)

    • 出た場所から入り直すと再認識しやすくなるとのことです。

  • キャプチャ範囲のマスクが可能です。

  • 年間サポートあり(グレードあり)

  • 動物のモーションはキャプチャ出来ません。

  • 明るい環境ではRGBカメラの使用が推奨されるが、暗所の場合は赤外線カメラ(OptiTrack Primeシリーズなど)が推奨されます。




以上、第十回モーションキャプチャーレビューは「Captury」をピックアップしました。
また興味深いモーションキャプチャーシステムを発見したらレビューしていきたいと思います。
またの機会をお楽しみに!



今回の検証には「アキュイティー株式会社」様にご協力頂きました。
Acuityでは、Capturyを利用したソリューション開発やCapturyの他にOptiTrackの販売・サポートも行っています。

Acuity様、この度はありがとうございました!



執筆:小松 真朗
執筆協力:公文 悠人・小川 恭平・張 釗

BASSDRUMとは

BASSDRUMは、テクニカルディレクターが中心に集まる組織です。さまざまなものづくりに関するプロジェクトにおいて、コアメンバーとして参画し、技術的な側面から寄与していきます。
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