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【e-skin MEVA】モーションキャプチャーをテクニカルディレクターが一気にレビューしてみた:第九回 スーツレビュー 後編

前編ではe-skin MEVAを総合的な観点からレビューしました。

後編ではより詳細に見ていきます。
それではどうぞ!

※本記事の情報は全て2024年1月現在のものです。



精度

★★★★☆

光学式のものと比較すると若干劣る部分はありますが、総合的に高精度であると言えるでしょう。
ノイズ的なブレも少なく、安定していて滑らかな印象を受けます。
その中でジャンプ後の接地時の足の埋まりなどは少し気になる点です。

今回検証した動きは以下となります。

  • バンザイ

  • 腕組み

  • ボックスステップ

  • ジャンプ

  • 床座り(あぐら)

  • 床座り(体育座り)

  • 床座り(正座)

  • 椅子座り(立ちから座り、座りから立ちまで)

総合的に見て、リアルタイムのキャプチャ用途においても十分で、映像用途としても若干の制限はあるかと思いますが、使うことが出来るレベルかと思います。

※ e-skin MEVAシステムは、ドイツ・ラインラント・プファルツ工科大学(RPTU)およびドイツ人工知能研究センター(DFKI)の研究グループであるwearHEALTHからスピンオフしたsci-trackとの共同開発によるものです。

遅延

★★★☆☆

  • 約100mS(約 0.1 秒 / 本環境の場合)

Xenoma社にお伺いしたところ、演算遅延というよりは加速度を元に計算を行う慣性式の特性上、計算の収束にどうしても若干の遅延が入るとのことでした。

手軽さ

★★★★★

  • 必要設備:

    • e-skin MEVA(スーツ・Hub)

    • 受信用Linuxマシン(e-skin MEVA専用PC)

    • モーション処理用ソフト(e-skin MEVAソフトウェア)

    • キャリブレーションソフト(センサー較正用ソフトウェア)

    • キャリブレーションボックス

    • データ受信用ドングル

  • 最低限必要なスペース:最低2m×2mの何も配置されていない空間

  • 必要人数(アクター含め):2

  • セットアップにかかる時間(モーションキャプチャが可能になるまでの時間):約3分

センサーが既にスーツに織り込まれており、装着の手順を踏む必要がないため、初めてモーションキャプチャスーツを着る人でも特に問題なくセットアップすることが可能です。
体勢のキャリブレーションも3つのポーズだけで済むので、30秒とかかりません。
慣性式の中ではMocopiを除いてトップクラスに手軽なものだと言えるのではないでしょうか。

他ソフトとの連携

★★☆☆☆

現在はUnityだけのようです。
ただ、受信マシンからは計算結果として各セグメントのQuaternionが流されており(Streaming機能)、そのQuaternionを関節角度に渡すアルゴリズムを作ることが出来れば、実質どのソフトにも対応可能とのこと。(Xenoma社提供のUnitySDKも同様の仕組みだそうです)

このあたりのStreaming機能の使い方やパケットの構造はデフォルトのキットを購入した方には公開しているとのことで、それぞれのソフトへの対応はそれぞれで対応してみてほしいという期待もあるということでした。

公式対応ソフト:
- Unity

出力可能なデータ形式には、一般的に使われているBVHの他に、独自の形式も含まれます。ただ、用いているアルゴリズムが異なるため、厳密に言えば、BVHとは計算結果に若干のズレがあるとのこと。
計算結果そのものはCSVで全て書き出しているので、研究者はそちらを使われることが多いようです。
また、計算結果をC3Dに戻してMotionBuilderなどで再計算するといったことも出来るということです。

価格

★★★☆☆

  • 購入価格:

    • ソフト・ハード等全て込み:¥3,000,000強(定価は非公開)

  • ランニングコスト:

    • 無し

ある程度の初期費用はかかりますが、スーツ等の消耗品を除けばライセンス費などのランニングコストは発生しません。
サポートについては、Xenoma社への直接連絡により利用可能です。
買い替え・紛失の場合にも、アパレル・Hubといった細かいパーツ単位で販売可能とのことでした。

その他

  • スーツサイズは S/M/L の他にKIDSがあり、身長120cmほどの小学生でも着用が可能です。

  • スーツ用のケースは耐磁仕様ではありません。6軸でも動作するため、基本的には問題ありませんが、9軸(地磁気)を使いたい方は注意の必要がありそうです。

  • 現在は一人のキャプチャのみ対応しています。

  • 通信はBluetoothで行われており、受信用のマシンを中心に半径30mほどが有効範囲となります。

  • 全身でのキャプチャの他、下半身のみのキャプチャも可能です。



以上、「e-skin MEVA」スーツレビューでした。
次回はXenoma代表 網盛さんへのインタビュー回となります!
どうぞお楽しみに!


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