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2023年度インターンシップ生による三人展「Lag Ahead」

4月20日と21日の二日間、BASSDRUMの京都事務所(通称:出町ガジェット)にて、2023年度のインターンシップ生による三人展が開催されました。タイトルは、「Lag Ahead」。初日は時折日差しが差し込む春曇り、翌日はあいにくの雨模様で少し冷え込む一日となりましたが、多くの人々が会場を訪れました。

インターンシップ生

⚫︎リム・フイニーさん
京都精華大学 メディア表現学部 メディア表現学科 メディア情報専攻
⚫︎玉置 賢太郎さん
京都芸術大学 芸術学部 情報デザイン学科 クロステックデザインコース
⚫︎奈良平 晃大さん
京都芸術大学 情報デザイン学科 クロステックデザインコース

展示会タイトル「Lag Ahead」とは

「lagとは本来『後ろにズレる』ことを意味します。近年の目まぐるしい技術革新のなかで、人間には気づくことのできない些細なズレが存在しているのではないか、もしそうだとしたら、人間はそのラグのさらに後ろにいるのではないか、と私たち三人は考えていました。『lag behind』(=遅れをとる)という言葉がありますが、その『behind』を『ahead』に置き換えることで、『ラグが先に進む』という意味になります。この矛盾に面白さを感じ、展示のタイトルに選びました。」(リム・フイニー)

それでは、3名それぞれの作品についてご紹介していきます。

リム・フイニー「fragments」

リムさんの作品は、ネガティブに捉えられがちなラグをポジティブに転換させる挑戦です。鑑賞者がモニターの前で体を動かすことで意図的にグリッチ(映像の破壊)を発生させ、それを楽しむインタラクティブな作品になっています。制作には、主にTouchDesignerとKinectが使用されました。

「TouchDesignerを使うのがほぼ初めてだったので、映像の破壊の再現が大きな課題でしたが、たくさん調べたり、チュートリアルを見たりして、理想のビジュアルに辿り着くまで努力しました。展示に参加すること自体も初めての経験で、企画のプロセスも学ぶことができました。会期中は思ったよりも作品を楽しんでもらえたことが嬉しかったです。」(リムさん)

リムさんの作品
作品の前で体を動かすとグリッチが発生する


玉置 賢太郎「amp」

玉置さんの作品は、デジタルメディアを扱う上で弱点となるラグ(遅延)を活かしたインスタレーションです。部屋の二隅には向かい合わせでwebカメラとモニターが設置され、webカメラで撮影された映像がモニターに映し出されています。この仕組みにより、モニターの映像は合わせ鏡のように繰り返されていますが、そこにラグが発生していることは、その間を人が通過して初めて可視化され、偶然的なビジュアルが生まれる、という作品です。制作にはTouchDesignerが使用されています。

「普段何気なく使っているデバイスに発生しているわずかな遅延は、どれだけ技術が進化しても切り離せないものであると、体験を通して鑑賞者に再認識してもらうことを目的とした作品です。今回苦労したのはテーマの言語化で、会期当日までしっくりくる解説が書けずにいました。しかし、来場者から様々な意見をいただくうちに、自分の作品の解像度が上がっていき、それが楽しかったです。学外での展示は初めてで、作品の搬入では多くを学びました。モニターやPCなどの機材を貸していただいたおかげで、大きな一歩を踏み出すことができました。」(玉置さん)

webカメラとモニターの間を人が通ることで、偶然的なビジュアルが生まれる玉置さんの作品


奈良平 晃大「The times that was supposed to be connected」

奈良平さんの作品は、「時間を操作する」というテーマで制作されました。大きな時計の文字盤には、同じ場所を24時間撮影し続けた映像が流れています。その時計の針を手で回すと、示された時間帯の映像が映し出され、鑑賞者が時間を操作できるという作品です。制作には、Premiere Pro、Arduino、TouchDesignerが使われました。

「課題や展示等で時計をモチーフにした作品を作っているのですが、今回はその三作目になります。時計には『時間』という概念があり、時計自体は時間を可視化するためのデバイスでしかありません。それら二つの間には主従関係のようなものが存在するように感じ、その関係性を入れ替えることに挑戦しました。制作においては、モーターの扱いが難しく、また、人が触れる作品であることから安全面での配慮が必要で、知人からのアドバイスを受けながら完成させました。」(奈良平さん)

会期中には、京都大学の「TEDxKyotoU」の運営メンバーが作品に興味を持ち、7月開催のイベントでワークショップが決定したそうです。

奈良平さんの作品は、鑑賞者が時間を操作できる

最後に

今回の展示の準備期間は、アイデア出しから撤収までの全工程を含めて約3ヶ月弱。短いながらも、それぞれの作品には独自の視点とクリエイティブなアイデアが詰まっており、来場者からも好評を博しました。また、関係者を含め、多くの人の記憶に残る展示となったことは間違いありません。今後の3人の活躍が楽しみです。

BASSDRUM京都では、引き続きインターンシップの受け入れを継続していきます。ご興味のある方は、ぜひ過去のレポートもご覧ください。


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