【VICON】モーションキャプチャーをテクニカルディレクターが一気にレビューしてみた:第三回 後編
前編ではVICONを総合的な観点からレビューしました!
後編ではより詳細に見ていきます!
それではどうぞ!
※本記事の情報は全て2023年5月現在のものです。
精度
★★★★★
抜群の精度です。
マーカーで絶対位置を取得しているため、ジャンプも床に埋まるなどのズレは一切確認出来ません。
光学式のため死角には比較的弱いはずですが、正座やあぐら程度であれば問題なくキャプチャ出来ています。
死角についてはカメラの配置によって精度が上下しやすいですが、一般的な配置が出来ていれば十分な精度は得られそうです。
検証環境:
VICON MX40 ×10
Blade
今回検証した動きは以下となります。
バンザイ
腕組み
ボックスステップ
ジャンプ
床座り(あぐら)
床座り(体育座り)
床座り(正座)
椅子座り(立ちから座り、座りから立ちまで)
総合的に見ても、完璧に最も近いと言える精度なのではないでしょうか。
上述の通りカメラの台数・スペック・配置によって精度の高さは多少変化しますが、スタジオの広さから余程乖離したカメラ環境でなければエンタメ方面としては十二分以上のクオリティのモーションが収録可能です。
遅延
★★★★★
約10mS(約 0.01 秒)
殆ど遅延はありません。
ただ、複数人同時に収録を行いリアルタイムにMotionBuilderなどの別ソフトへデータを送ろうとした場合には若干の遅延が発生することが想定されます。
手軽さ
★☆☆☆☆
必要設備、所要スペース、セットアップにかかる時間・工程全てに大きなコストを要します。
研究用途にも使用可能な分、限界まで精度を引き上げるための工程(ROM体操など)が多くあり、モーションキャプチャを始めるにはオペレーターのスタジオ入りから2時間程度は見積もっておく必要があります。
必要設備:
VICON対応カメラ(MX40, T10S 等)
VICON対応ソフトウェア(Blade, Shogun 等)
スーツ・靴
マーカー(数十~数百個)
カメラ設置用設備(トラス・ポール等)
最低限必要なスペース:最低4m×4mの何も配置されていない空間。
必要人数(アクター含め):2
セットアップにかかる時間(モーションキャプチャが可能になるまでの時間):約60分
スタジオキャリブレーション(カメラ位置をソフトウェアに認識させる工程):約10分
センサー装着・リンク:15分
キャリブレーション(アクターが装着したマーカーをソフトウェアに認識させる工程):20-30分
Vicon社や国内販売代理店でもあるCrescent社がセットアップ関連のチュートリアルを公開しているため、習得ハードルはそこまで高くはないものの、ある程度慣れたオペレーターと初めて扱うオペレーターでは練度の差がハッキリと見える程度には経験が要されます。
他ソフトとの連携
★★★★☆
主要なソフトウェアへの対応は公式でされているものの、Mocopiと比較するとその他様々なソフトウェアと連携するにはハードルが高いため、星4つとさせて頂きました。
公式対応ソフト:
VICONから提供されている連携用プラグインはUnity, UnrealEngine, MotionBuilderがあり、その他研究用途向けに多数のプラグイン・連携ソフトウェアが提供されています。
上記プラグインを使用して、Viconソフトウェア(Shogun, Bladeなど)からUnrealEngineやUnityへ直接データをストリーミングすることは可能なものの、一度MotionBuilderへ送信してRetargetを行ってから他ソフトへデータをストリーミングするワークフローが一般的のようです。
価格
★☆☆☆☆
購入価格:
VICON一式:2000万
カメラ用設備:300万
ランニングコスト
年間サポート:150万
その他施設維持費
※VICONは設備に応じて大きく費用が上下するため、上記は一例です。
精度も最高クラスなら値段も最高クラスということで、企業でも手がなかなか出ない価格となっております。
ランニングコストも全く無視出来ない価格で、導入の際には相当の覚悟を要するでしょう。
(最新型のVICON用カメラは1台だけで900万するようです…)
以上第三回モーションキャプチャレビューは「VICON」をピックアップしました!
今回の検証には 株式会社テトラ 様にご協力頂きました!
テトラ様、ありがとうございました!
次回は「Xsens MotionCapture」をレビューします!どうぞお楽しみに!