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Leica製3DスキャナーBLK360を試す 前編

BASSDRUMの森岡です。本日は3Dスキャナーのベンチマークを行ったのでそのレポートを共有したいと思います。

BLK360とは?

BLK360はLeica製の3Dスキャナー。通常のカメラとサーマルカメラ、そしてLiDAR(LiDARについては「新型iPadに搭載された「LiDAR」とは」で詳しく解説)の3つのセンサが搭載されていて、一度の撮影で全てのセンサのデータを取得できる、いわゆるPointCloud(ポイントクラウド)とか点群と呼ばれる形式のデータの撮影装置です。

BLK360は非常に小型で、500mlのペットボトルを一回り大きくした程度のサイズ。また、バッテリ内蔵で、無線でデータ送信するのでワイヤ類なしで撮影作業できるなど、非常に使い勝手が良いようにできています。カタログ的なスペックについては以下のサイトに非常に詳しく解説されているのでご参考ください。

価格は2,600,000円と非常に高価ですが、建築用途で使われていることもあり、レンタル業者がいくつかあります。

ざっくり調べた限りでは5日間で250,000円~といったところ。今回BASSDRUMではレックスさんからお借りしてBLK360のベンチマークを行いました。

BLK360対応アプリ

BLK360はそれ単体では撮影のみしかできず、ポイントクラウドデータのマージやその他利用可能なファイルフォーマットへの変換は専用アプリケーションを介して行う必要があります。また、屋外用途が多いためか、iPad(とりわけiPad PRO)用アプリケーションを介して処理をするのがメジャーなようです。アプリケーションは以下のものがあるようです。

Leica BLK360

1ショットのエクスポートのみなら無料。マージなどは有料。窓や壁の指定ができるなど、どちらかという建築業界向けのアプリ。

Autodesk Recap Pro

Autodesk社製のアプリ。 今回はこれでテストしました。ライセンスがないとほぼ全ての機能が使えません。ただし、ライセンスは初回30日無料。iPad上では点群をフリービューで確認できないのがネック。それ以外は概ねUI含め良い感じ。1月ごとのライセンスもあり、月額6600円。1年分まとめ買いすると55,000円。

Leica Cyclone FIELD 360

BLK360の製造元、Leica社のアプリ。1年間220,000円と割高だが点群をフリービューで確認可能らしい。また、このアプリはPC版もあって直接PCでもBLK360と接続してデータ通信が可能らしい・・・。

Matteport

今回紹介する中では一番多機能で、点群からメッシュの生成まで行ってくれます。また、マージの際の整列(複数のポイントクラウドデータの位置関係の推定)の予測精度も一番高そうでした。ただし、Matterportはメッシュとメッシュ生成に採用した一部の点群は出力できるものの、撮影で取得した点群そのものは書き出せない仕様なので注意が必要です(Twitterにて堀川隆弘さんにご指摘いただき修正しました。ありがとうございます)。

今回採用したデータワークフロー

TouchDesignerやvvvvで扱えるアスキーの.ply形式で書き出すことにしました。そのために構築したデータワークフローは以下。

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Recap PROやBLK360は.e57というファイル形式でデータを書き出すのですが、これはあまり対応しているソフトウェアがあまり多くないたです(vvvvやTouchDesignerも非対応)。フリーのポイントクラウド処理アプリのCloud Compareで.ply形式に変換しました。ちなみによく使われているMeshLabはe57形式に対応してないらしいです。点群データの処理に関しては別途記事を執筆予定です。

手順的なワークフロー

今回採用した作業手順を以下のようになりました。

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オレンジのフローは主に撮影現場で行うフロー、青は主に制作現場で行うワークフローです。つまりオレンジのフローが終わったら撮影は終了、というイメージです。


e57形式は複数回撮影した場合、ポイントクラウドデータが別れたまま保持されているので、ply形式で書き出すには全てのデータをマージする必要があります。

撮影時の手順や注意点

一度の撮影は通常の品質だとデータ転送含めて5分程度。高品質にすると情報量が倍以上になるが転送にとても時間がかかるうえ、Matterportはフリーズしてたりしたのであまり使わないほうが良い印象です(iPadのバージョンによる相性なども考えられるのでiPadとBLK360、そしてアプリの連携テストは撮影前に入念にチェックしておいた方が良いように思います)。

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2回目以降の撮影データを受け取るとiPadでアプリケーションを使ってマージを行う必要がある。この際、基本的にはアプリケーションが自動的にマージをしてくれます。が、自動まーじがうまくいかない場合、オーバーラップしている部分が少ない可能性が高く、撮影箇所を増やしたほうが良いです。iPad PROでダメならPC側に持って行ってもオーバーラップが少ないとあまりマージがうまくいかない可能性が高いです。

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撮影はカラーデータを利用する都合上、曇天の日がベストです。雨は勿論NGですが、晴れだと全反射が映り込んだり、日が傾いた時間帯に撮影すると三脚の影などが伸びて、頂点の色として保存されてしまう場合があります。HDR撮影機能などもあるが、それだけでは防げないので考慮しておく必要があります。

また、BLK360自体の内蔵メモリは27GBあり、100ショットまでローカルで保存できるが、バッテリが40ショット程度で切れてしまうので予備バッテリは1つか2つ持っておいた方が良い印象でした。

できあがったデータの品質について

非常に高品質です。フォトグラメトリ―と比較すると非常に規則正しく並んだ色付きの点群データが取得できます。

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また、頂点数も1ショットあたり5000万頂点(!)と、普通に点を表示するだけでリアルタイム処理はいっぱいいっぱいになるレベルの高密度、高精度です。その結果、一括で頂点数を削減してもかなり形状を把握できるような情報を保持した点を残すことができます。

また、全天球なので他の既存製品と比較して上方向のに非常に強い印象です。

iOS の画像 (1)

これは道路から撮影したデータですが、向かいのビルの7階か8階の表面まで計測できています。

感想および案件利用に際して

非常に簡単な操作で広大な面積の3Dスキャニングが行えるため、非常に使い勝手が良いです。フローを充分に把握しておけばアルバイトなどの他の人に撮影をお願いすることも可能なレベルにオペレーションが組めるかと思います。

値段は確かに高いですが、レンタルで考えると案件利用は充分に現実的ではないでしょうか。

後編では実際に今回撮影したサンプルを共有、説明していきます。



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