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SEEDS展オープニングトーク「技術の種はどう生まれ、どう芽吹くのか」| EVENT REPORT②

2024年7月24日から26日の3日間、乃木坂にあるNew Stand Tokyo Galleryで開催した「SEEDS — 未公開プロトタイプ展」の一環として、オープニングトークイベントを実施しました。

トークイベントでは、展示会のテーマである技術の種=「プロトタイプ」がどのように生まれ、成長し、具体的な事業やプロジェクトへと発展していくのか、その過程を詳しく掘り下げました。本記事ではそのレポートをお届けします。

SEEDS展 開催の背景について
今回の展示会は、ベースドラムのテクニカルディレクターたちが日々手がけているプロトタイプの一部を展示するという初めての試みでした。
ディレクターを務めた中田は、これまで開発されてきたデモやプロトタイプの多くは社内での共有にとどまり、社外の人に見てもらう機会が少なかったことに触れ、「皆さんとの交流を通じて、これらのプロトタイプに新たなアイデアや価値が生まれ、発展していくことを楽しみにしています」と話しました。

SEEDS展 ディレクター中田 拓馬




Session1「技術の種はどう生まれるのか」

第一部のトークセッションは、プロトタイプが生まれた背景や今後の可能性について、互いに探究していく時間です。登壇したのは、ベースドラムのテクニカルディレクター、長洞 龍生、小松 真朗、尾高 陽太、小川 恭平、さらに、トークイベントのファシリテーター 中田 拓馬です。

左から、長洞 龍生小松 真朗尾高 陽太小川 恭平中田 拓馬


セッションはそれぞれの自己紹介から始まり、プロトタイプの開発背景について話が進みました。

今の自分たちの悩みを解決するツールを作りました」と語ったのは、「ドラミーのアイデア☆ファクトリー」を担当した小松。

「プロジェクトを進める中で、テクニカルな分野に強いメンバーが多い一方、アイディアを出す場面で苦労することが多かったんです。そこで、”質問に答えるだけでアイディアを自動的に生み出してくれるプロトタイプ”を、自分たちのために作りました」と振り返ります。

プロトタイプ開発の背景について話が進む中、「技術の民主化」というキーワードでも盛り上がりました。

小川が開発を担当した「ミニチュアバーチャルプロダクション」は、バーチャルプロダクションの技術を誰でも使えるようにする「技術の民主化」を目指して作られたものです。
通常は高価な機材と専門知識が必要なバーチャルセットの制作環境をミニチュアサイズで再現し、手軽に利用できるようにと開発しました。
また、海外出張の際には、持ち運びしやすいようにiPhoneベースでのデモ開発にも取り組んだそうです。最終的には、技術者が不在でも撮影が成り立つような環境を作りたいと語ります。


▼小川がフランスのSUPERBIEN社にてデモンストレーションしている様子


長洞が開発を担当した「シューティングゲームカスタマイズシステム」も、技術スキルを持たないユーザーでもゲームの世界観やキャラクターを簡単にカスタマイズできるという点で「技術の民主化」を体現しています。
また、尾高が開発を担当した「映像解析AIを用いたスイムフォーム解析システム」は、一般的なWEBカメラとブラウザさえあれば、特別なソフトウェアをインストールせずに、泳ぎの映像からストロークの軌道や水中姿勢などを可視化できます。
これらのプロトタイプは、「誰もが手軽に技術を活用できるようにしたい」というテクニカルディレクターならではのこだわりを感じます。

イベントの後半、参加者の質問から「技術者として、どのくらい具体的な企画だとテンションが上がるか?」という話題に発展しました。
「もしクライアントから『どこでもドアを作って』と頼まれたら?」という例に対し、長洞は「完全に再現するのは難しくても、どこでもドア的な体験をどう実現するか?を考えるのは技術者としてワクワクする」とし、尾高は「例えば『どこでもドアを使って世界旅行に行きたい』と捉えれば、色々な方法を考えられるし、工夫の余地が多いから面白い」と話しました。各テクニカルディレクターがそれぞれのアプローチを共有し、議論が盛り上がりました。


▼登壇したテクニカルディレクターたちが開発したプロトタイプは下記をご覧ください




Session2「技術の種はどう芽吹くのか」

プロトタイプが具体的な事業やプロジェクトへと発展していくには、どのような道のりがあるのでしょうか。
第二部では、ベースドラムテクニカルディレクター森岡東洋志と、ソニー・インタラクティブエンタテインメントの田中章愛(たなか あきちか)さんをゲストスピーカーとしてお迎えし、実際の事例を交えながら、その過程について詳しくお話しいただきました。

田中 章愛(たなか あきちか)
2006年筑波大学大学院修了後、ソニー(株)入社。2013年米国スタンフォード大学訪問研究員を経て、2018年より(株)ソニー・インタラクティブエンタテインメント(以後SIE)に在籍。ロボットの研究開発やソニーのものづくり・共創スペース「Creative Lounge」などに携わる。2016年よりtoio™の新規事業プロジェクトを有志の仲間と提案・事業化し、2019年3月SIEより一般発売。toio™は2022年ロボット大賞文部科学大臣賞受賞。

田中さんが携わった「toio™(トイオ)」の開発は、「ブロックやおもちゃが動き出したら面白いのでは?」という同僚との会話をきっかけに生まれました。ユーザーテストで子ども達が大喜びしたことから、本格的な研究とプロトタイプ開発がスタートします。

「研究開発がスタートした後、技術的な課題を解決するのに3年ほど試行錯誤を続けることになりますが、開発を継続できたのは、初期段階での研究発表会でお客さんからいただいたフィードバックでした。」と田中さんは語ります。

途中技術開発が思うように進まず、プロトタイプがお蔵入りしそうになったこともあったそうですが、過去に得られた研究発表会での「面白い!」といった声や子どもたちが大喜びしていた笑顔を思い出し、開発を続けることができたと言います。

「客観的なフィードバックは、周囲に対して開発を継続するための説得材料にもなりますし、何より自分たちが開発に向かうモチベーションになりました。」

その後、見事社内の新規事業プログラムに採択。有志の仲間を集め、提案・事業化し、2019年3月に一般発売に至りました。2022年、toio™はロボット大賞文部科学大臣賞を受賞しています。

田中さんはtoio™が製品化するまでに、あらゆる検証を行いました。プロトタイピングは、製品化のための改良点を明確にするだけでなく、最終的にその製品が市場に受け入れられるかを評価するための大切なステップでもあります」とその重要性を語りました。

数々のプロトタイプ開発を実践してきた森岡は「プロトタイプは、プロジェクトでさまざまな人を巻き込むためにも有効です」と話します。

森岡「プロトタイピングは単なる技術的な試作にとどまらず、プロジェクト全体の推進力になり得ます。具体的な形を持ったプロトタイプがあることは、上司やクライアントへの説得材料として非常に有効ですし、実際に一度市場に出してユーザーの評価を得ることは、プロジェクトメンバーの合意形成にも役立ちますよね。特に体験を伴うものは言葉だけでは説明しきないところがあるので。」

一方、どんなものを作るのかを言葉で表現することも、プロトタイピングの大切な一歩であると語ります。


「重要なのは、プロトタイピングの”正のスパイラル”が段階的に回っていくことです。まずは言葉で作り、次に足りない部分を絵で作る。段階を経るごとにできることの解像度が上がり、作るものの精度も上がっていきます。作るもの、予算、工数、プロジェクトメンバーなど、あらゆることを柔軟に調整、改善していくことが最終的なプロジェクトの成功に結びつくのではないでしょうか。」


以上、「SEEDS — 未公開プロトタイプ展」オープニングトークイベントの様子をお届けしました。

BASSDRUMでは、今後もSNSなどを通じて、社内で生まれたデモやプロトタイプを発信していく予定です。ぜひ各種SNSをフォローしてみてくださいね。

https://linktr.ee/bassdrum

また次回、みなさまに新たな「技術の種」をお披露目できる日が来ることを楽しみにしております。




撮影:青山航
文章:福井彩加 & ChatGPT
校正:磯崎 智恵美


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