ドラマ「ユニコーンに乗って」に映り込む映像をvvvvで作った
2022年8月2日に放送されたTBSテレビの火曜ドラマ『ユニコーンに乗って』第5話で、LEDスクリーンに流れる映像の一部をBASSDRUMで制作させていただきました。
概要
普段はテクニカルディレクションの仕事を受けるBASSDRUMですが、今回は作中にUnreal EngineやUnityを使って”リアルタイムエンジン”で何某をする若手スーパーエンジニアが出てくるそうで面白そうだったのと、BASSDRUM社内でもドラマが話題になっていたので、今回は特例として受けることにしました。リアルタイム映像ということで、今回制作に使用したのはvvvv gammaです。自作レンダラーでフレームを書き出して納品という形を取りました。
携わらせていただいた部分は、永野芽郁さん演じる主人公の成川佐奈(なるかわ さな)が社長を務めるベンチャー企業「ドリームポニー」がバーチャルスクール「スタディーポニーキャンパス」の開発資金を集めるべく挑戦することになったビジコンにおいて、冒頭で流れるLEDスクリーン上の7秒ほどのCI映像。一瞬でしたね。他案件が佳境だったこともあり、確保する作業時間は3日間に限定し、急ピッチで制作を進めます。
↓ 第5話の予告
モック制作
クライアントからの要望はかなり明確でした。具体的な絵コンテをもらっていたので、基本はそれに沿って作る流れになります。
コンテを参考に、1時間半で制作したのがこちらの映像。
見えてきたこと
当初「馬」と「ポニー」の違いがわかっておらず、馬のモデルを購入して走らせていたところ、後から「ポニーに差し替えてほしい」と言われてしまいました。そんな凡ミスはありつつも、モックを作ったことでいくつか見えてきたことがあります。
馬の質感とパーティクルの質感のバランス調整大事
LEDスクリーンで流す場合、形がくっきりしていた方がいい
コントラスト比を抑えないと、撮影した時に白飛びしてしまうかも
コンテが10秒にハマらない気がする…
ポニーのジャンプは難しい
諦めたこと
当初、ジャンプ部分でポニーが粒子になって虹になる、といった演出を考えていたのですが、そうなるとAlembicで読み込んで頂点からパーティクルをEmitさせつつ、メッシュからパーティクルに切り替わる部分をうまいことブレンドさせないと成立しないことに気がつきました。いろいろ試してみたのですがここが上手くいかず、また尺の問題や3日では難しい課題も発覚したので、虹になる部分はなしで進められないかと交渉してもらいました。
フィードバックと提出
その後2回ほどチェックを出して、戻ってきたフィードバックとしては
cut1とcut2をカットせずに繋げてほしい
粒子の方向とポニーの進行方向を逆にしてほしい
ロゴが出てくるタイミング等の調整
最後ブラックアウトするまでの尺を長めにとってほしい
この他にも、虹色を背景にしいてみたり、ブルームを入れてみたり、パーティクルがきれいな丸で出るよう調整したり、色味を全体的に調整しながら、最終納品したのがこちらの動画。
テクニカルディレクターのお仕事
BASSDRUMは案件でも社内プロジェクトでも度々LEDスクリーンを使っているので、今回は現場に下見には行けなかったのですが、LEDの見え感と癖はおおよそ理解していました。LEDマッピング用のフォーマットがあるので広義にはテクニカルとも捉えられること、また、作中のキャラクターがリアルタイム映像の話を出していたので、それであれば得意のvvvvで作っても問題なさそうだし、それはテクニカル領域にハマることなど、が引き受ける際の決め手となりました。
切り離せないテクニカルと映像の関係
BASSDRUMは制作会社ではなく、ましてや映像制作会社ではないので、こういった案件を受けてしまうと誤解を生むのではないかという不安はありました。ただ、昨今Unreal EngineやUnityがバーチャルプロダクションや映像制作の裏側などで多用されており、テクニカル領域と映像領域が切り離せなくなってきているなか、そういったテクニカルの絡む新しい領域の布教活動もBASSDRUMの使命の一環だと考えると、今後も内容次第で挑戦させていただくことがあるかもしれません。
視聴後の感想と反省
ドラマに映り込む映像を作るのは初めてだったのですが、物語が進行する中、背景で流れる映像の印象って本当に一瞬だなと感じました。西島さんの左手に添えられたクレジットの方が印象に残るくらいには、一瞬に感じました。その「一瞬である」ということを加味した映像にはできていないなという反省があります。
立体的なカメラワークがドラマ本体のカメラワークとバッティングするのでもっと平面的な映像にした方がよかったなとか、十字のブルームかけてなかったら粒子の印象残ってなかったなとか。
一番の反省は、主体となるポニーのモーション。これが微妙だと、全てが微妙な印象になるんだなと気付かされました。今回ポニーは購入したものを本当にただ配置しただけで、全く手を加えていないのですが、もっとそこに時間をかけた方が良かったと感じました。接地面をちゃんと意識してポニーの速度を調整した方が良かったのか、あるいはもう少しムラのある動きを取り入れた方が良かったのか。答えは見えてませんが、そこの印象が変わるだけで、数段仕上がりが良くなるのではないかと感じたので、次の機会があったらそういうところを意識してみようと思います。