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川村さんと私と、「フィージビリティ」

Whateverの川村真司さんと私は、6年間、ニューヨークでPARTY NYという会社を一緒にやっていた間柄だ。いま、そのPARTY NYは日本のwhateverと統合して、川村さんはwhateverのCCOになり、私は別途立ち上げたBASSDRUMというテクニカルディレクターの会社+コミュニティを運営している。つまり、2018年くらいから各々の道に進んでいる感はあるのだが、東京のオフィスはBASSDRUMが同じビルの6階でwhateverは7階だし、たまに飲みに行ったりするし、離れちゃった感じというのもそんなにない。

PARTY NYをつくる前も、そもそも東京のPARTYを一緒につくったFounder同士だし、PARTYの直前に「映し鏡」を一緒につくったりしているので、早いものでもう10年くらい一緒に何かやっているということになる。ああ、名古屋の栄のホテルに缶詰になって映し鏡のコード書いたのももう10年も前になるのか。あれはしんどかった。

10年もやっているといろいろなことがあるが、人間、10年付き合いを続けられるということは、お互いお互いを認めているということでもあるし、仕事のパートナーとしては何らかの阿吽の呼吸があるというのも事実だ。

立ち位置としては川村さんはクリエイティブとビジュアル、私はテクノロジーと実装、という役割分担で、ニューヨークでクリエイティブのチームをつくってきた。

私もアイデアをつくることはあるし、実際PARTY NYのプロジェクトの中には私のアイデアで実現したものもある。とはいえ、基本的な図式は、川村さんが何かいろいろアイデアを考える。それに対して私が「できる」「できない」「こうすればできる」「これはできないけどこっちならできる」「そこにはこういう制約がある」といった判断と提案を行って、実際のプロジェクトとして実現していく、という形でやってきた。

PARTY NYのプロジェクトたちはこちらから。

この「できる」「できない」「こうすればできる」「これはできないけどこっちならできる」「そこにはこういう制約がある」という判断・提案作業は、私たちテクニカルディレクターの大事な職務である「フィージビリティ・チェック」、つまり実現性チェック、あるいは「フィージビリティ・コンサルティング」なんて呼ばれる。ここでの立ち回りや提案がプロジェクトの質や方向性を大きく左右することもある。アイデアはアイデアだけでは思いつきでしかないが、「こうすればできる」が伴ってやっとアイデアになる。

で、それでいうと私は概ね8年間かそこら、ちょこちょこ他の人とやることもあったし、自分でクリエイティブディレクションを担当する局面も結構あったが、おそらくは世界有数のクリエイティブディレクターであろう川村さんの専属テクニカルディレクターとしてやってきたようなところもあって、そういう意味では川村さんが日々思いつく無茶かつ実現できるのかどうかスレスレのラインのアイデアに対してずっと実現方法を提示してきたという自覚と自負はある。私はそれ以前もそれ以後もテクニカルディレクターだが、この8年間は、私というテクニカルディレクターをなにがしかの形で成熟させてくれた8年間ではあっただろう。

しかし、ニューヨークのマーケットの変化やいろいろな要素も重なり、川村さんはwhateverのCCO、私はBASSDRUMという会社・コミュニティを始めた、というのは前述の通りだ。whateverには他にもテクノロジーの担当がいるから川村さんは他のテクニカルディレクターと仕事をしてきたし、私は私でそもそもBASSDRUMは「いろんな人のプロジェクトでベース・ドラム=リズムセクションを担当したい」と思って始めているので、川村さん以外のクリエイティブやビジネスオーナーと仕事をしてきた。

そんな中、先日、久しぶりにチャットベースではあるが、川村さんと軽くブレインストーミングのようなことをやった。こういう時期なので、●●ってオンライン化できるだろうか、とか、こういうプロダクトがあったらStay at homeも捗るのではないか、とか。

前述の通り、そこには10年来の呼吸というものがあるので、普通に話しているうちに良い感じにアイデアと実現方向がバランス良くまとまっていったりする。なんだかんだ言って、川村さんとそういう議論をするのは話が早いし、グルーヴ感がある。ある種、ちょっとしたスポーツ感もあり、ちょっとした名人芸でもある感じがした。

そんなやり取りの中でふと思いついた。「このやり取りは、多分公開したら『番組』になる」。つまり、アイデアを思いつく川村さんと私によるフィージビリティ・コンサルティングは、コンテンツとしても面白いのではないかと思ったのだ。

BASSDRUMはこの「フィージビリティ・コンサルティング」を大事な業務にしているテクニカルディレクターの集まりだが、実際、「フィージビリティ・コンサルティング」という作業がどういうものなのかが世の中にはあんまり伝わらないので、その必要性、「テクニカルディレクターが企画会議にいると、いかに便利で楽しいか」をいかにいろんな人にわかってもらうかという方法を常に考えていた。

しかし、これをイベントとして、「行列ができる法律相談所」みたく、ゲストにアイデアを持ってきてもらってBASSDRUMのテクニカルディレクターたちが「フィージビリティ・コンサルティング」を実演する、「行列ができる技術実装相談所」みたいな感じにしたら、私たちテクニカルディレクターの価値をもっと世の中に伝えることができるのではないか、と思った。イベントの名前もどうせならそのまま「FEASIBILITY=フィージビリティ」にしよう。

ということで、思い立ったが吉日、すぐにイベントを運営できるようにして構成を考え、ゲストにお声がけを始めた。今回は、私は司会者に回り、BASSDRUMの皆さんにゲストからの無理難題に答えてもらう形にした。

初回のゲストはもちろん、私が誰よりも、彼の持ってくるアイデアの無茶な感じとややこしさと素晴らしさを知っている、whatever・CCOの川村真司さん。

BASSDRUMはもっとサービスやシステムの提案もできる。そういう意味で、そういった議論も深まりそうな、小売の世界で様々な提案をされ、ビジネスの種を撒いてこられたRetail Futuristの最所あさみさん。

そして、1ヶ月に一度くらい、世の中を騒がせる「その手があったか」的なアイデアでホームランを打ち続けるアイデアの帝王、ブルーパドルの佐藤ねじさん。

お声がけしていたらなんだかすごく豪華になってしまったが、この3名のアイデアとそれを料理するBASSDRUMのテクニカルディレクターたちによる「フィージビリティ・コンサルティング」。一番楽しみにしている視聴者は私自身かもしれない。しかしこの「実演」を通して、私や川村さんがずっと楽しんできた「アイデアと実現」のカタルシスを少しでも内外に伝えることができたらと思う。

BASSDRUM技術実装コンサルティングイベント「フィージビリティ」

来週6/24(水)の19:00〜でYouTube Liveで開催。是非、多くの人にご覧頂きたい。