0104「バスドラムでも良いんじゃないか」
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0104「バスドラムでも良いんじゃないか」

qanta

明日から普通に仕事が始まってしまうらしい。会社としてはたぶん明後日からのような気がするが、私は明日からミーティングも作業も入っているようだ。年初の最初のうちは間引き運転になるだろうとも思ったので、しっかり2週間、考えていることを文章にまとめていこうかなとも思っていたものだが、あと1日2日は書くことがありそうではあるものの、それ以上は無理矢理書くことになってしまうのかなという気がするので、今日までにしようと思う。

仕事が始まるので、自分たちがやっている仕事の話を書くことにする(ゆえに、仕事の主体であるBASSDRUMのマガジンにも記事を追加する)。

私、及び私たちは、クリエイティブやコミュニケーションの領域で「技術」というものを中心に据えてお仕事をさせて頂いている。その中で常々言っているのは、技術などは何かを実現するための手段でしかないということだ。大事なのは、何を実現するか、何をつくるか、なのであって、何を使ってどう実現するか、というのは裏方が担当すべき領域であり、バンドで言ったらヴォーカルやギターといったフロントマンが担当する領域ではない。ゆえに、私が所属して運営している団体=BASSDRUM(ベースドラム)は、ベースとドラム=リズムセクションということでそういう名前にしている。私たちが司る技術領域は、デジタルのものづくりのリズムセクションにあたる。

世の中には、やたらとそこがあべこべになっている要件が多くて、たとえば「AIを使ってなんでも良いから何かをやりたい」という要望は、手段と目的が逆になっている可能性が高い。この場合、AIというのは手段で、「なんでも良い何か」が目的になる。しかし、何かを実現しようとするときに、多くの場合その順番は、目的が明確で、そのためにいろんなオプションの中から手段を選ぶ、という順番になるべきだ。ところが、この場合、AIという手段が明確で、目的が不明確だ。そうなると、「AIを使う」ということが目的化してしまう。もちろん、AIを使った施策を行うことで企業イメージを先進的に見せたい、みたいなときに手段が目的化してしまうケースはあるのだろうが、そうだとしてもそれによって実現することが理にかなったものでないと、先進的に見せるどころか、世の中的には「?」となってしまうし、使い方がわかっていないことがバレてしまう。

ところが、AIも然り、新しい手段=新しい技術の登場は、人間が実現できることを拡張することが往々にしてあるし、「目的」以上に社会や文化全体に影響を及ぼす。人間は人間で、人間の欲求や要望というのは本質的には変わらないと思うが、技術の進化というのは、世の中の常識というか、人間の思考のスタートラインというものを変えてしまうことがある。

たとえば、蒸気機関という技術が登場して、その技術が実現できること(大量生産や蒸気機関車などなど)を人々がイメージできるようになり、それに刺激されて人々は新しいアイデアを生み出せるようになったり。最近だったら、ブロックチェーンとかNFTみたいなものは、おそらくまだ人々がその技術の可能性というか仕組みを理解しきれていなくて、まだまだ技術に振り回されていて、「?」なアイデアもたくさん生み出されている段階だが、もっとそういった技術の本当のおいしさが理解されてくると、人々の発想のスタートラインというのは前に進むことになるのだろう。

なので、技術というのはどうしたって裏方ではあるのだが、表方?の人たちよりも、世界をガラッと変えてしまうポテンシャルを持っている領域ということになる。しかし、もともとの「BASSDRUM」という名前には、どちらかというと、技術で世界を変えよう、みたいな意味合いは込めていなかったし、そこに込めていたのはあくまで裏方としての矜持であり、職人魂だったりする。

ところで、「BASSDRUM」は「ベースドラム」と読むのだが、日本では多くの人に「バスドラム」と読まれてしまう。かなり近しくお仕事をさせて頂いている人でも「バスドラム」と呼ぶ人がいるほど、発音を間違えられてしまうことが多い。「バスドラム」というのは、ドラムセットの足のペダルでドンドン叩く大太鼓のアレのことで、「BASSDRUM」というとあの大太鼓が連想されてしまうのはスペル的には間違っていないわけだが、英語の発音だとそもそもあの大太鼓も「ベースドラム」だったりするからとてもややこしい(たぶん、「バスドラム」というのは和製英語的な何かな気がする。)。

町山智浩さんがBS朝日でやっている「アメリカの今を知るTV」という番組があって、ちょこちょこYouTubeにも動画が上がっている。この番組は非常に良い番組で、昨年の大統領選の時期にはリアルタイムなアメリカのコアな情報を町山さんのアグレッシブな取材で丁寧に届けてくれていた。普通にアメリカのニュースに触れていてもあんまり理解することができない、その裏に流れているカルチャーであるとか、なぜトランプが田舎で支持されるのか、みたいな感覚を町山さんは常に的確に理解されていて、この番組を見ているだけで、かなり空気を理解できる。というか、文字通り「アメリカの今を知る」ことができる。

で、この「アメリカの今を知るTV」、選挙戦から昨年の暴動、コロナ禍、といったコアトピックがひと段落して、初夏くらいになるとようやく時事と関係のない話題を取り上げるようになった。その時期になってこの番組で取り扱ったのが、ニューオーリンズでの取材と併せてまとめられた「ジャズの歴史」だ。映像を貼っておく。前後編ある。

これが非常に面白かった。南北戦争で軍楽隊が各地に置いていった楽器がアフリカンの貧しい人たちに行き渡ることで、新しい音楽が生まれた、とか、ジャズという音楽が社会と文化の偶然で生まれたものだったのだなということを知ることができる。

その中で、ジャズのみならずその後のロックやポップミュージック全てを変革した大発明として紹介される技術がある。確かに言われてみれば、それが発明されたことをきっかけに、人類の音楽やリズムの表現力が飛躍的に向上したことに納得が行く。

その画期的な技術というのが、他ならぬ「バスドラム」(大太鼓+ペダルのやつ)の発明とそれに伴うドラムセットの発明なのだ。それによって、一人の演奏者が複雑なリズムをつくることができるようになった。上のやつの最初の動画の後半で、「世界最初のバスドラム」が紹介されている。ここでも言及されているように、この発明がなかったら、その後のジャズはおろか、デスメタルすら存在しなかった。

まったくそんなつもりは無かったのだが、「BASSDRUM=バスドラム」は、ただの裏方を象徴するパートの名前ではなく、実は人類のクリエイティブを大きく進化させた革新的な技術の名前でもあったのだ。

BASSDRUMを開始したのが2018年。そこから4年が経ち、いろんなプロジェクトや現場で、裏方として信頼をして頂けるようにはなってきた実感がある。ここからは、裏方軍団としての品質はしっかり守りつつ、もっと文化やものづくりの出発点を押し上げていくような存在になっていかなくてはいけないし、様々な領域のトランスフォーメーション=変革にも取り組んでいかなくてはいけない、となると、私たちはプロジェクトのリズムセクション=ベースドラムでもありつつ、文化を前に進める存在=バスドラムでもあるべきなのだろうと考え始めた。

そんな新しい気持ちであるとか、責任意識を持ちつつも、今年も手段を司るものとして様々なものづくりのお手伝いをできれば幸甚です。

どっちみち英語で読むと「ベースドラム」なので変わらないんですが、2022年もBASSDRUMをよろしくお願い申し上げます。


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BASSDRUM / Tech Director - http://bassdrum.org - http://qanta.jp 日記と過去記事が掲載されるはずです。