CES、SXSW出展経験者に聞く「出展効果を最大化させるための戦略とは? 」
こんにちは!
BASSDRUMファシリテーターの福井です。
BASSDRUMでは、5/9(木)に「International Exhibition Insights」というイベントを開催しました。
世界最大級のテクノロジーの祭典「CES」、音楽・映画・テクノロジーの複合イベント「SXSW」等の国際見本市出展者及び、出展に関心をお持ちの方を対象としたイベントです。
このイベントでは、国際見本市に出展経験のある企業の担当者様をお招きし、出展における戦略や成果についてさまざまなお話を聞くことができました。
今回のnoteでは、イベントのハイライトをレポート形式でお届けします!
スタートアップから大手企業まで、多様な出展の広がりを見せる国際見本市
近年、CESやSXSWをはじめとする国際見本市への日本企業の出展が相次いでいます。CESでは、従来の「Consumer Electronics Show」という枠を超え、化粧品、航空、農機具メーカーなど、多様な業界からの出展が見られるようになり、SXSWでは、スタートアップだけでなく大手企業も自社のイノベーションをアピールする場として活用されています。
近年国際見本市において存在感を増している韓国は、まさにこうした取り組みを通して数多くのスタートアップを海外見本市に送り込み、世界の注目を集めています。
本イベントは、こうした動向を背景に、日本企業の国際見本市への出展に対する期待と成果を探り、今後のグローバル展開戦略に対する洞察を得ることを目的として開催いたしました。
オープニングトーク
本イベントのファシリテーターとして、DentsuLabTokyo土屋泰洋さんをお招きしました。2015年から2024年まで継続してCESに参加されているという土屋さん。近年の国際見本市の変化や、本イベントの趣旨についてお話しいただきました。
テクノロジーそのものよりも「何が解決できるか?」が重要に
「近年のCESでは、”エクスペリエンス”や”ソリューション”という言葉をよく聞くようになりました。テクノロジーのトレンドやテクノロジーそのものよりも、それによってどんな問題が解決できるのか?どんな体験を作るのか?など、テクノロジーを使う目的を明確にすることが重視される方向に大きくシフトしていると感じます。それに伴い、いわゆる今まで非テック企業と言われてきた企業がテクノロジーを活用して新しいイノベーションを生み出し、その成果を展示するという動きが広がってきています。」
海外見本市の価値を改めて深掘りする機会
「この状況を踏まえて、我々は海外見本市をどのように活用するべきなのか、今こそ深掘りしてみる価値があるのではないか。既に出展されている皆さんをお呼びしてお話を聞くっていうことができると、いろいろな発見があるのではないか、というのが今回のイベントの趣旨です。」
出展経験企業の講演
株式会社コーセー 大石郁氏 (メイク製品研究室所属)
株式会社コーセー 大石さんは、高速プロジェクションマッピング技術を活用したMixed reality(複合現実)なメイク体験ができる『COLOR MACHINE』を東京工業大学 渡辺義浩研究室との共同研究によって開発。2022年8月に国内でのサービスローンチ後、わずか5ヶ月でCESへの初出展を実現されました。
「CESに出展した主な目的は、自分たちが開発した技術がどの程度グローバルに受け入れられるのか、事業化・他業界への展開可能性はあるのかを探ることでした」と大石さん。
他の展示ブースとの差別化を図るため、あえて黒一色のブースにする工夫をされたり、海外トレンドを取り入れたパターンのメイクができるよう設計されたりと、インパクトのある体験を目指した戦略的な展示設計を行われました。
「結果として1,200名以上の来訪者を迎え、多くの来場者から驚きと感動の声が上がり、高評価と新しいビジネスチャンスを得られた」と語る大石さん。スピード重視の戦略が功を奏し、グローバル市場での事業化の可能性を確信された大石さんの講演は、これから出展を考えている人々にとって大きな励みとなり、行動を起こすきっかけを提供する内容でした。
ユカイ工学株式会社 青木俊介氏(CEO/ 武蔵野美術大学 教授)
ユカイ工学は「ロボティクスで世界をユカイに」というコンセプトのもと、しっぽのついたクッション型セラピーロボット「Qoobo」などの製品を開発されています。これらの製品は、社内コンペでアイディアを募り、試作品を作成し、展示会で発表するというプロセスを経て発売されました。
青木さんはこれまでCEATECやCES、SXSWなどの幅広い展示会に参加され、展示会ごとの性質に合わせた製品のプロモーションを行われています。特にCEATECでは、メディアやバイヤーの注目を集め、クラウドファンディングを通じた製品化に成功。さらに2023年には、呼吸するクッション「fufuly」を発表し、CES2023イノベーションアワードを受賞されました。
青木さんは、メディアに取り上げてもらうための戦略として「展示そのものの工夫はもちろんですが、プレス関係者向けに開催される『CES Unveiled』や『ShowStoppers』など、別途開催されるメディア向けのイベントに参加することがとても重要性です」と強調されました。
ユカイ工学が創り出す製品の魅力はもちろん、それを広めるためにどのような戦略的な取り組みをされているのかが明確に伝わる講演でした。
AGC株式会社 宮川卓也氏(広報・IR部 広告・マーケティングチーム マネージャー兼会長秘書)
AGC株式会社宮川さんに、国際展示会における自社の位置づけと戦略についてお話しいただきました。
宮川さんは、事前アンケートで最も多くの質問が寄せられた「出展の費用対効果」について、「定量的な評価では測りきれない側面もあるが、長期的な視点で目標設定することが大切」と述べられました。実際にミラノサローネ出展時には、あらかじめ5年間継続して出展されることを決め、1年ずつ確実にステップアップされていったそうです。また、出展における社内の説得方法について、「不確実な要素が多いため、ロジックだけでは限界がある。教育の観点や競合他社の動きを参考にし、世界に挑戦する意気込みを共有することが重要」と、ご自身の具体的な体験を交えながらお話しいただきました。
出展効果を高めるための具体的な戦略としては、来場者はとにかく時間がないので、相手の関心を引くポイントを見極めて話すことや、情報過多な展示を避けること、一方で説明なしに理解できてしまう展示にせず、コミュニケーションを重視することなどを挙げられました。
「出展前には予想していなかった各業界のリーディングカンパニーの方々がブースを訪問してくれました」と語る宮川さん。展示会は「明確なROIが説明できるものではない」という前提のもと、最大限の成果を目指し、それが予想を超える結果にもつながったことが、宮川さんの熱意あふれる講演から伝わってきました。
パネルディスカッション
講演後のパネルディスカッションでは、土屋さんをファシリテーターとして、弊社代表 清水幹太と登壇者によるトークが行われました。
国際見本市の展示ごとの特性や、出展するプロダクトの選定方法、各国のブースの見せ方の違い、主催団体からの減点基準(!)などなど、出展経験者ならではの非常にリアルなお話を聞くことができました。
終わりに
国際見本市への出展に対する期待と成果を探り、今後のグローバル展開戦略に対する洞察を得ることを目的として開催した本イベント。
テクノロジーをうまく活用し、日本だけでなく世界スケールで製品を発表することの意義を改めて感じる時間になったのではないかと思います。
また、規模や業界の異なる3社の出展プロセスや具体的な工夫をお伺いできたことで、実践的な学びを得られる時間でもありました。
懇親会も大いに盛り上がり、閉会の時間になっても各所の話題が尽きない様子が印象的で、運営としても嬉しい気持ちになりました。
イベント後のアンケートでは、「具体的な事例をもとに当事者の生の感触を聞けたため、非常に有意義だった」「早速上長との話し合いに役立てました!」「参加してなかったら非常にまずかった」といった、参加者からの嬉しいフィードバックも寄せられました。
ベースドラムでは、国際展示会に関するメディア発信(THE TECHNOLOGY REPORT)、展示物の設計、展示の体験設計など、技術的な観点でのサポートを行っています。ご興味のある方は hello@bassdrum.org からお問い合わせください。また、イベントへの参加や、その他ベースドラムの事業に興味を持っていただいた方もこちらからお問い合わせください。
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