第2回 BASSDRUM 公開総会レポート
少し前のことになりますが、10月2日(水)に「第二回 BASSDRUM 公開総会」を開催しました。公開総会は、テクニカルディレクター・コレクティブのBASSDRUMがクローズドで月一回行なっている“技術者のための情報共有会”「総会」を惜しげもなく一般に公開するスペシャルなイベントです。今回は豪華なゲストとともに過ごしたテックな一夜の様子を皆さんにお届けします。
<公開総会プログラム>
■ Deep Learning 小史 by 鍛治屋敷 圭昭(BASSDRUM)
■ 触覚コンテンツのつくりかた by 渡島 健太(Whatever)
■ 急速に進化するデジタル時代の技術屋 by 葉茂伸(Hybridmind)
■ ICTとIoTでスマート農業だ! by 花井 浩之(S2 Factory)
■ パネル「テクノロジーと表現」
西村 保彦(Dentsu Craft Tokyo - 株式会社電通クリエーティブX)
森岡 東洋志(株式会社ワントゥーテン)
林 久純(HYS INC. - BASSDRUM)
清水 幹太(BASSDRUM)
前回に引き続き、会場は青山にあるピースオブケイクさんの開放感ある素敵なスペースをお借りしました。参加者は120名ほど。大半が仕事帰りの方なので、ご来場いただく皆さんへの感謝の気持ちを込めて、毎回ドリンクと軽食をご用意しています。今回は、片手でも食べやすい「まい泉」のミニバーガーを仕入れました。並べてみると圧巻です!
最初のプレゼンは、BASSDRUM 鍛治屋敷 圭昭によるディープラーニングの歴史について。テクニカルディレクターとして様々な案件に関わっていると、「あ、そこはAIで」と当たり前かのように発せられる言葉に現場が振り回されることが多々あります。しかし、「本当にみんなAIが何かを理解しているのか?自分たちは雰囲気でAIをやっているのではないか…?」という疑念からAIを調べてみたら意外と面白かったので共有、という内容です。
1940年代(!)から始まったAIの歴史を紐解きつつ、20分という限られた時間のなかで、AI、機械学習、ディープラーニングの違いなどについても駆け足で触れていきました。
会場の片隅では前回同様、中尾 仁士さんによるグラフィックレコーディングが。こちらは改めて後日ご紹介させていただきますね。
二人目のプレゼンターは、Whateverの渡島 健太さん。最近では、ゲームやVRなどエンタメ分野でも注目される“触覚”がテーマです。視覚は光、聴覚は音を感じるセンサーですが、触覚は熱や手触りなどを感じる皮膚のなかにあり、視覚や聴覚とは違って覆うことのできないもの、いう説明からのスタート。
ケーススタディとして挙げたのは、初台のICCで展示された「見えないスケートボードの存在感」という作品。実際にはそこに存在しないスケートボードが滑走する様子を触覚で感じられるもので、エンジニア / ハプティック・デザイナーとして渡島さんが関わった時の制作秘話は大変興味深く、「触感はシミュレート できないため、トライ&エラーを繰り返すしかありません」というの渡島さんの言葉に多くの人が頷いていたのがとても印象的でした。
3人目は台湾の制作会社 Hybridmindの葉茂伸(Amo)さん。BASSDRUMの台湾メンバーでもあるAmoさんは、案件紹介を交えながら、クライアントからの「最新技術を使って面白いものを作りたい」という希望に対して「提案される予算が少なく、納期も短いのが問題」という台湾の現状を教えてくれました。また、集客を目的としたキャンペーンは減り、ブランドが代理店を通さず直接インフルエンサーに仕事を依頼することが増えているため、台湾のテックな人たちは従来とは異なる新たな価値を模索している、とも語りました。あまり耳にすることのない台湾の状況を知り、日本も台湾も大きな差がないと多くの人が感じたのではないでしょうか。
最後のプレゼンは、2007年にIMG SRCのシステムチームから会社化したS2 Factoryの花井 浩之さんによる、テクノロジーで農業を手助けしようというプロジェクトの紹介。
きっかけは東日本大震災。原発事故で被曝した環境放射線用の測定車の代わりに、歩いて放射線量を測る人々を助けようと京都大学が制作した測定器用のサーバーやウェブアプリをS2さんが用意したことがご縁の始まりだったそう。その後、農地の除染ムラや栄養の偏りを確認するために同じ技術で開発を進めたトラクターが、今回のプロジェクト。改善点はまだ多くあるそうですが、大学と企業が協力して日本の農業を救おうとする様子には、技術の共有により解決できる問題が数多くあると感じずにはいられませんでした。
今回、初の試みとなったパネルディスカッションでは、「テクノロジーと表現」というテーマが掲げられました。テクノロジーを使って表現する機会が増えるなか、「表現の領域におけるテクニカルディレクションとは何なのか」「テクノロジーは表現の手段なのか目的なのか」といった問いに、ファシリテーター BASSDRUM清水幹太、ゲストにDentsu Craft Tokyo 西村 保彦さん、1-10 森岡 東洋志さん、HYS INC. / BASSDRUM 林 久純さんをお迎えして議論しました。
同じTDでもビジュアルに対する距離感が様々で、異なるジャンルで活躍する三氏は、「自分がつくるものを作品だと思っているか?」という質問に「自分が作りたいものを作っているだけ」(林さん)、「作品よりも常に体験を作りたいと思っている」(西村さん)「自分が作るのは、作品やアートではなく筆(ツール)」(森岡さん)とコメントしました。
全プログラムが終了したあとは、懇親会をしながら飛び入り歓迎のライトニングトークです。タカラトミーの土肥さんはTDの心をくすぐるスマホ用アナログ玩具のPRと大抽選会を開催し、会場を大いに盛り上げてくれました。ほかにも、パネルに参加してくださった1-10の森岡さん、チームラボ カタリストの中村さん、IMG SRCのテクニカルディレクター 吉井さんが所属会社の案件や個人の制作物を紹介してくださいました。
というわけで、今回も大勢のエンジニア、テクニカルディレクター、デザイナーらの皆さんにご参加いただいた公開総会ですが、皆さんにとってテックなインスピレーションや出会いの場となっていると幸いです。そして、会場を貸してくださったピースオブケイクさん、ドリンクを協賛してくださった制作会社のpuzzleさん、プレゼンやパネルに登壇してくださった皆さん、本当にありがとうございました!
次回は半年後、オリンピックイヤーの2020年3月頃を予定していますので、ぜひまた大勢の皆さんにお越しいただければと思います!
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?