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技術先行で「天啓じゃー!」をつくる

クアドラ・プロトタイプカレンダー

BASSDRUM清水です。

テクニカルディレクションという仕事は、プロジェクトの中のわりといろんなレイヤーでわりといろんな形で貢献することができる仕事です。実際の制作・開発の中でものを仕上げていくところでいろいろ判断して指示を出してときには手を出すのも仕事です。アイデアに対してのフィージビリティを判断したり、みたいのもわりとやらなくてはいけない仕事です。

私もテクニカルディレクターを名乗ってかれこれ13年くらいは経っていますが、そんなテクニカルディレクター人生の中でも意外に見逃せないのが「企画の種を技術からつくる」という役割です。

巷の「アイデアのつくり方」みたいな本だと、まあ王道のアイデアづくりの順番っていうのは、

何かアイデアを思いつく



それを技術的にどう実現するか考えて、設計する(仕様化する)

みたいな感じになります。アイデアありき、で、技術はあくまでも手段ということになります。まあそれはそうで、技術は当然ながら手段です。

ところが、これは余談半分なんですが、この「何かアイデアを思いつく」というプロセスを、技術的な知見無しに天真爛漫にやると、残念なことになることはままあって、「こういうのをつくりたいんですが」というオファーが企画書なりで回ってきたときに、数ページざっと見て、「ああ、これは全然無理ですね」となることがわりとあります。もちろんプロとしてなるべく「こうすればどうにかなるんじゃないか」という対案を出したり、「こういう考え方に変えれば同じ目的を達成できますよね」なんていう提案をしたりして、精一杯形にする方向に持っていきます。それもテクニカルディレクターの仕事です。

で、このへんの話題にはいくつか切り口があります。

1つは、「テクニカルディレクターをプロジェクトの早い段階で入れておくと、そういうロスが少ないから絶対良いですよ!」というのはあります。これは読んで字の如しで、家族にかかりつけの医者がいるように、会社には顧問弁護士がいるように、各プロジェクトにはテクニカルディレクターを入れておくと、「なんで今までテクニカルディレクターなしで企画とかしてたんだろう」ってなります。間違いないです。

で、あともう1つはこの「対案・変更も含めて、アイデアを実現可能・精緻化する」というプロセスは実際問題これをちゃんとやらないと形にできない「アイデア」というのがあるので、これはテクニカルディレクターの大事な仕事です。ただ、ここをきちんと作業項目としてやっている人は少ないです。ゆえに、なんとなくそういうことを頑張ってやっても報われない感じになっちゃうことも多いです。ので、BASSDRUMではこの工程を「アイデア・エンハンスメント」と呼んで、きちんと工程化することにしています。

この2つは両方共大事なプロセスなので、またそのうち記事にして書くことができればと思いますが、今回はこんなものにしておきつつ、本題は、「企画の種を技術からつくる」というテクニカルディレクターの役割についてです。

つまり、日頃から面白そうな技術的な引き出しを溜めておいて、それをクリエイティブチームなりデザインチームなりに共有することで、こういうプロセスが発生することがたまにあります。こんな感じです。

テクニカル「こんな技術がありますよ・こんな技術の使い方がありますよ」



クリエイティブ「な、なんだって! そんなことができるのか! 天啓じゃー! これを使って企画にしよう」

みたいな感じです。これは、決まると非常ーに気持ち良いです。自分がつくっていたプロトタイプに予算がついて企画になって、たくさんのユーザーに使ってもらえるわけですし、楽しい。

なので、自分が興味を持った技術や、「こんなことやあんなことできるんじゃないか」というものをとりあえず形にしておく、みたいな形でプロトタイプをして常に懐に持っておくことは、技術屋さんとして「粋(いき)」なのです。粋な技術屋さんは、みんなプロトタイプを懐に持っているものです。

自分が手がけたプロジェクトで、このプロセスがはまったのはいくつかあるのですが、一番面白かったのは、ユニクロのブログパーツ「UNIQLO LUCKY SWITCH」をつくったときです。

このブログパーツは、ブログにスイッチ型のウィジェットを設置しておいて、来訪者がそのスイッチを押すとそのブログなりサイトにある全部の画像がぺりぺりっと剥がれる当たりくじになって、ユニクロ商品が当たる、というものでした。自分のブログで当たりが出ると、ブログのオーナーにも何かもらえます。大層多くの人が楽しんでくれて、成功したプロジェクトと言えるかと思います。

このアイデアは、元はといえば、Web Designing誌の「dotFes」というイベントの「クリエイティブ大喜利」という、テーマに応じて何か面白いものをつくってきて発表する、というコーナー用につくった、「いろんなサイトの顔写真が全部私の顔になる」というプロトタイプで使われていたテクニックをベースにしています。

同じイベントに一緒に出ていたクリエイティブディレクターの中村洋基さんが、それを見て「こんなことできるんだ!」と驚いてくれて、じゃあ一緒にユニクロの案件をやろうというときに、「じゃああれ使ってなにかやろうよ」となって形になったのが「UNIQLO LUCKY SWITCH」でした。ベースとなるプロトタイプもあったので、それなりに短い時間で実現できた、というおまけもありました。これなんかは、前述の

テクニカル「こんな技術がありますよ・こんな技術の使い方がありますよ」



クリエイティブ「な、なんだって! そんなことができるのか! 天啓じゃー! これを使って企画にしよう」


が、イベントの壇上で起こったという愉快な事例だったわけなのですが、こういう、「先にできることがある、先に技術がある」というプロセスは、たまに起こることがあって、実際、技術始まりで美しいストーリーテリングをつくることに成功してうまく行った事案というのはたくさんあります。

今週始まったピラミッドフィルムクアドラさんの「プロトタイプカレンダー」は、そういうプロジェクトです。BASSDRUMは、「コミュニケーションが得意な技術屋」として、「技術の見せ方」の部分でお手伝いさせて頂いています。技術というのは、ほうっておくと取っ付きにくくなりがちなので、そこをどう表現するときちんと伝わるのか、みたいな部分も含めて、スタッフの皆さんの壁打ち相手になっています。

クアドラさんのプロトタイプチームの、「変わったプロトタイプがなんかすごい勢いで生み出されていく」感じ、というのはものすごくて、実際、チームの皆さんは、忙しいレストランの厨房のようなすごい連携プレーでどんどん料理ならぬプロトタイプが皿に盛られて運ばれてきます。

このダイナミズムをうまく外に出して、あわよくば、

テクニカル「こんな技術がありますよ・こんな技術の使い方がありますよ」



クリエイティブ「な、なんだって! そんなことができるのか! 天啓じゃー! これを使って企画にしよう」

を生み出せないか、と考えました。そこで「SMSプロトタイプ10連発」という形で、10日連続でSMSを送信するプロトタイプをつくる! ということにし、ここ数週間チームの皆さんがローンチに向かって「厨房」にこもっていました。

「あ! これは使えそうだぞ!」などと思って頂いた広告代理店のクリエイティブの方や、メーカーのご担当者様などに気軽にご利用頂くために企画書に使っていただける資料も配布しています。まだまだ初回で、取り組みとしても「プロトタイプ」なところがありますが、長く続いていく取り組みになって、楽しみにしてくれる人が増えてくれるとみんな嬉しいです。そしてこれらを見たいろんな方々に「天啓」が降りてくれれば幸いです。

BASSDRUMは技術のチームですが、実際に技術を使って何かをつくる、というだけではなく、このような形で「技術を表現する」お手伝いもさせて頂いています。今週・来週と10のプロトタイプが登場します。何卒よろしくお願い致します。 


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qanta

BASSDRUM / Tech Director - http://bassdrum.org - http://qanta.jp 日記と過去記事が掲載されるはずです。

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