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テクノロジーで笑顔をつくる

“長い洞から龍が生まれる”というまるで中国の神話のような名前を持つ、ベースドラム の第7世代・長洞龍生(ながほら・りゅうき)。その名前の印象とは少し違い、お笑いと定義山の三角油揚げが大好きな仙台出身の彼に、岡山のココノヱ社に入社したきっかけ、得意とする体験型プロジェクトの面白さ、最近の興味などについて聞いてみました。


1枚の名刺からエンジニアに

ー どういったきっかけでテック業界に入ることになったのですか?

出身は仙台で、宮城大学在学中にデザイン情報学科でグラフィックやプログラミングなど色々なことを学んでいました。当時、特に好きだったのは、センサーを使ったインタラクティブなプログラミングの演習だったのですが、Wiiリモコンを振ったらプロジェクターに映っている映像が切り替わるプログラムなどを自分で作っていました。
そのうちにデジタルなプログラミングとアナログな行動が結びついて反応が起きていくようなものにも興味を持ち、メディアアート的なものも知って、仕事にしたいと思い始めたんです。でも、僕が就活していた頃はインタラクティブをやる会社がまだあまりなくて。
そんな頃に震災があり、東北を元気づけようとそれまで東京と京都で開催されていた「dotFes」というクリエイティブ系のイベントが仙台で開催されました。楽しそうだなと思って覗きに行ったところ、インタラクションのコンテンツを出展していた岡山の「ココノヱ」という会社の方に出会い、名刺を頂いたんです。後日、書かれていたアドレスに自分から連絡して「入社したいです!」とアプローチして、2013年からエンジニアとして岡山で働くことになりました。

ー 運命を感じるような出会いでしたね。現在はテクニカルディレクターとしてBASSDRUMに所属しながら、他社のサポートにも入っているんですよね。

Webや映像を手がけるpuzzleという制作会社に出向中です。案件を進める上で簡単な挙動などを確認したり、技術的な面でつまずいた時などに入らせていただいて、テクニカルサポートをしています。主にWebの領域なんですが、ココノヱ時代にWebも作っていたので、当時の経験を活かしながらpuzzleさんに還元している感じですね。

ー デザイナーの方とのやりとりもあるのですか?

ありますね。「こういう動きをさせたいんだけど、できますか?」とか「こういう演出は可能ですか?」といった相談を受けて、軽くモックを作って「こういう挙動をします」と説明することもあります。

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ー 媒介というか、いろいろなものを結びつけるイメージなんでしょうか?面白そうですね。

Webに関しては自分でも実装をするので、そういった相談に乗るのも楽しいですし、実装自体も楽しいです。仕様に落とし込んでいく作業も楽しいかな。

楽しむ姿を見られるのが体験型の醍醐味

ー エンジニアからテクニカルディレクターになり、キャリアは今年で9年目になる長洞さんですが、これまで特に印象に残っているプロジェクトはどちらでしょうか?

幾つかありますが、ひとつは「ピーポーパニック」ですね。釣り竿についたUFOデバイスを使って地上にいる人間を空中から捕まえるゲームなんですが、僕はデバイスの作成とUFOの位置検出のためのプログラミング、楽曲制作を担当しました。賞も頂きましたし、受託じゃなくて自社案件だったので、自分たちで企画して、どう面白くできるかを自由に考えて作ることのできたコンテンツでした。
制作期間は実質1ヶ月程しかなく、担当は僕以外にUnityのエンジニア、デザイナー、ほかにプロジェクトマネージャーが1人、デバイスエンジニアが1人で、本当に面白くなるかどうかも分からない状態で進めていきました。プロトタイプを作りながら「明日はこれを試そうか」ってゲーム部分のエンジニアと僕とデバイスのエンジニアで毎日トライアンドエラーを繰り返して砂場から城を作る感じだったんですが、そこが大変でもあり楽しくもありました。

ー 完成したものを発表したときはいかがでしたか?

それ以前はWeb制作がメインだったんですが、Webってユーザーの顔が見えないんですよね。実際に楽しんでいる様子がわからなくて。「ピーポーパニック」のような体験型のコンテンツは、お客さんが楽しんでいる姿を直接見ることができて、こういったプロジェクトの醍醐味だと感じました。

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ー その流れで言うと、BUTTON社と共同開発した虫を集めて音を奏でる「ドレミファ採集」も体験型コンテンツでしたね。

そうですね。僕は虫取り網デバイスを作ったんですが、仕組みとしては虫取り網にICカードの読み取り装置を組み込み、虫側に入ったICカードを読み取ります。読み取りを検知したら虫取り網側から虫かごの役割をしているiPadにBluetoothで「この虫をゲットしたよ!」というメッセージを送るというデバイスでした。
ただ、デバイスを作るのは簡単ではなく、スイッチ・充電・強度・安全性・サイズ等、色々考えたプロジェクトでした。最初は3Dプリンターで全部作ってみたんですが、最終的には全てクッション性の素材になったり。完成後も現地に飛んで行ってハンダ付けをしたりして… あれは大変だったな。(笑)

ー 虫取り網やUFOなど、デバイスが特徴的なプロジェクトが多いんですね。

そうかもしれないですね。そう思うと体験ありきで、そこにどう技術を組み合わせたらさらに面白くなるのか、という発想のプロジェクトが多いですね。

ー 「体験ありき」っていいですね。

「アフォーダンス」って言葉をご存知ですか?物体が行動を引き寄せる現象を「アフォーダンス」というのですが、例えば最近だと、コンビニのレジ前にソーシャルディスタンスを保つための足跡のマークがあるのも「ここで止まってくださいね」という行動を引き寄せているんです。デバイスの開発はそれを意図的に組み込んでいく作業でもあります。でも、そうなって欲しいという願望を込めても、うまく行かないことが多い。例えば、声を出して欲しいコンテンツの前に「声を出してください」と書いても、誰も恥ずかしがって声を出してくれない。だから、メガホン型のデバイスなどを置いて行動を引き寄せる。そんなアプローチを心がけています。

知識を増やしてより大きな自信に繋げたい

ー 最近気になっている技術はありますか?

ディープラーニングが面白いですね。例えば、ディープラーニングを利用して人間の関節や姿勢を取ることができる「openpose」という技術があるんですが、これまでKinectやRealSenseといったハードウェアを使わなければ実装ができず、コストが掛かるのが課題でした。でも今はWebカメラひとつあれば良くて、様々なセンサー、ハードウェアに依存していたものが、ディープラーニングという技術でソフトウェア側で内包することができる。そうすると、ハードウェアトラブルが減って、メンテナンス性が上がるんじゃないかな、と。
現場のハードウェアトラブルって、そこに行かないと何も解決しないような辛い状況があったりもするんですが、今までハードウェアに頼っていたところがソフトウェア側に内包されるとネットを通じてバグの修正が可能になるので、仕事がしやすくなるんじゃないかなと思っています。
あとは、今までコンピュータでやるには難しかったことも実際に可能になっていて、「ディープラーニングすげー!」って感じですね。(笑)

ー 興奮が伝わりました(笑)。これからやりたいことってありますか?

Webや体験型コンテンツの制作はこなしてきましたが、もっと専門的な知識を身に付けたいと思っています。例えば、今はUnityの開発をしているんですが、その知識を深めたりとか、家庭用コンセントを扱える電工二種っていう免許を取得することで今よりも仕事がしやすい環境を作って、少しでも自分の自信にも繋げていきたいですね。

ー 最後に、長洞さんにとってBASSDRUMはどんな場所ですか?

… ふと思い浮かんだのは、バットマンビギンズの修行する場面。寒い場所や細い場所など、過酷な場所で鍛錬するところですね。

ー 修行の場?キツイ場所っていう意味ですか?(笑)

キツイときもあります(笑)。でもそれが確実に力になっているっていうのは身に沁みています。
自分のこともプロだとは思っていますが、他にも様々なプロフェッショナルがいて、刺激をたくさんもらえる場所ですね。

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インタビュー:戸井田 拓斗

◼︎ 長洞 龍生
仙台生まれ。宮城大学にてPureData、openFrameworksに触れフィジカルなデジタル体験に興味を持ち2013年より株式会社ココノヱにてクリエイティブエンジニアとして入社。
Webの開発の他、子供から大人まで誰もが楽しめる体験型インスタレーションの制作の企画、フロントエンド、ハードウェア、コンポーザーと幅広く担当する。2019年2月より「BASSDRUM」に参画。
Yahoo!JAPAN インターネットクリエイティブアワード2015 / BitSummit 5th Award / 第21回文化庁メディア芸術祭 エンターテインメント部門 受賞。
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BASSDRUMは、テクニカルディレクターを中心に集めた職能コミュニティ、そしてその中核にある会社組織です。さまざまなものづくりに関するプロジェクトにおいて、コアメンバーとして参画し、技術的な側面から寄与していく「テクニカルディレクター・コレクティブ」です。