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Making of MOMENTum #2

前回KAPPES誕生のきっかけとなったMOMENTumについて書いた。その続き。

ミラノサローネでの反響

残念ながらアワードは取れなかったが、狙い通り目立つことはできた。会場には多くの日本人も来てたので、国内の一部の人にも覚えてもらえた感触はあった。

パリで9月に催されるMaison&Objetでトレンドブースが3つあるうちの1つ、François Bernard氏の展示「EXPERIMENTAL」に招待された。これは、MOMENTumをそのまま展示して欲しいという話だったが、残念ながらミラノバージョンは破棄して帰るというダイナミックな計画だったので、作り直すしかなかった(制御機器とかはもちろん持ち帰ったが)。が、とにかく良い話に感じたのでやる気は満々。

上記のMaison&Objetと同時期にパリで催される展示にも誘われた。この話は、デパートの中の特設ブースで企業スポンサーがいる形での展示ということで、やや不安もあるが、なんらかの費用は出してもらえそうだったので、一応話は聞いておくことにした。日本をテーマにしていくつかの展示をするとか。

moooiのマルセル・ワンダーズにこえをかけられて、「うちのブランドから出さないか」的な漫画とかであるサクセスストーリーみたいなことを言われた。舞い上がるような良い話に感じたので、こちらも継続。家具になったら教えてくれ的な話だった。

他にもdesignboomに紹介されたり、様々なメディアに紹介されたりして嬉しかった。

KAPPES始動でもある

KAPPESのメンバーを集めて報告会をし、次の話もきたからやる気だって話をシェアしたりしながら、KAPPESとしての活動のビジョンをどうするかとかも話した。仕事の話がKAPPESに来たらどうするかとか、投資したお金は利益が出たらどう配分するかとか、シビアな話もした。

とりあえず9月に向けて作ることに

MOMENTumのコアメンバー5人は、とにかくテンション高かった。やはり、ミラノでとてもいい気分を味わってるので、やや勘違いにも似た興奮状態だったのかもしれない。

9月にパリでの展示の話があり、かつ初号機は捨ててきたので作り直す必要がある。どうせならバージョンアップだろという展開で、パリ向けにはバージョンアップ版を作ることに決定。当時、自分はやってた仕事が急にポシャったこともあって、どうせならMOMENTum の新型開発に集中しようかと思った。バージョンアップ開発ということで、課題も多く、やることはエンジニアリングに関わることが大半なので、自分が適任だと思ったからだ。9月に間にあわせるには自分がフルコミットするしかないと思った。

とはいえ、当時フリーランスだった自分は、ミラノに向けて私財を投じていた。こんなことは二度とないかもと思って家族も連れてミラノに行ったのもあって、貯金をだいぶ使った状態から、さらに仕事をしないで投資開発をし続けるという無茶な計画をしてしまっていた。計算すると、少ない貯金が尽き果てるが、ギリやれるみたいな感じ。子供もいるのによくそんな無茶やったなと今思うと怖い。。

改良計画

テーブルにする
マルセル・ワンダースの話もあるので、家具に寄せていくのは必須に感じていた。純然とアートとして売るのも難しいので、ラグジュアリーな家具として行くならテーブルだろうという話に結論した。

ノズルの存在を消す
水を出すところが、ミラノ版では隠すところまでたどり着かず、水滴が綺麗に出ることにだけ集中した。結果ノズルが見える形になっていた。展示用のテンポラリーなものとしてはギリ許される感じだとしても、ラグジュアリーな家具としてはありえない。絶対に隠したい。

照明も隠したい
水滴を際立たせるために照明を仕込んでるのだが、ノズルと場所を取り合ってしまう。そこも解決が必須。

天板を乗せる
テーブルなんだから天板が必要。つまり天板を支える柱も必要となる。

メンテナンス問題
わずかな期間でここを解決するのは難しいが、考え始めないとダメだなというので、考えていた。

ここまでの問題を解決しつつ、高級な家具にしたい。

値段設定

高級な家具として作るんだから、どのぐらい高級なのか、売値を決めておくべきだということに。あわよくば、パリで受注をとってきたい。

メンバーで色々話し合ったが、ある種勢いで500万円という話が出た。わかりやすいキリのいい金額だ。高い!と言われる金額だが、作ることを考えるとそんなに高くない。仕事で一点もので作るとしたら、500万で作れるのはミラノ版くらいのもんだろう(ゼロ発進なら600mm版までかな)。これから作る高級版は全て最高に仕上げる勢いでやるので、もっと高くてもいいくらいだ。1台の発注では赤字になる。10台ぐらい受注がきたら実行できるかなというところ。メンテナンスのことを考えると怖いので、そこは別途費用がかかることを伝えていくしかないか。。

売れたあとのことは考えつつも、まずは作らねば。とにかく前のめりなwe+がチームにいることもあり、お金をケチるようなことはしないで最高のものを作ることになった。

パリ展示はMaison&Objetのみ

デパートの展示は、協賛企業の要求があり、やや作品を損なう提案が来たので、その条件ではできないと断った。結果展示は1つ。そこにフォーカスしつつ、経過をマルセル・ワンダースに報告するということで進めて行くことに。ただ、進捗報告で500万の売価で新型を開発進めてることを話し、原価の話もしたところで、マルセル・ワンダースの話は無くなった。たしかに、moooiでもそこまで高い家具は扱いがない。テクノロジーを攻めの姿勢で組み込むのはまだ市販品には難しいのかもしれないと思った瞬間だった。(水も使ってるしいろいろ難しい作品ではある)

とにかく、Maison&Objetにフォーカスして、新型MOMENTumの開発は続けた。

デザインの決定

色々考えた結果、ノズルの問題と照明の問題を解決しつつ、テーブルとしてやや奇抜な形を導いた。

いきなり完成品みたいに見えるが、これは買った写真にCGを合成したものだ。実物よりも先にできたイメージ。(メンバーのTANGRAMに相談したらこういうの作ってくれた)

上はCADの画面。内部構造もやや見えますね。

内部の現象が起こる器の部分はミラノ版と同じ形状にするので、直径1000mmくらい。天板は低反射ガラスを採用した。美術館でよく採用されるフィルム式ではなく、ガラスの表面に蒸着するようなもので、まるでガラスそのものが低反射になってるような製品があったので、それを採用した。透明度も高い。

外装は中を隠蔽する形で全体を覆うような形。メンバーでカーブを吟味して決めた。FRPで作ることにして、担い手を探した。FRP作家の木村さんと出会いお願いした。モチベーション高く取り組んでもらえた。車よりもピカピカになるとの話があって、興奮した。

試作検討

設計が正しいか作ってみないとわからないので、必要最低限の形で試作した。自宅にあるCNCで切削した。自宅のCNCでは、削れるサイズが限られるので、CADで設計した全体から切り取ったごく一部。

わかるだろうか。ドーナツ状のアクリルを作り、それは導光の役割で使う。突起の円柱はノズルで、水を出す場所になる。ギリギリ導光アクリルの下の隙間から水滴が出てくるという設計だ。

それにしてもCNCとか3Dプリンタとか、サクッと試作ができるので、本当にいい時代。

設計のポイント

この設計は、メンテナンス性よりも見た目を優先した結果である。通常ならメンテのための穴を後ろの部分とかにあけるわけだが、それをやるとかなり損なう。多分台無し。しかも、家具。裏とかの概念が想定しにくい。

結果、メンテは大変だが、天板のところからしか内部にアクセスできないことにした。ガラスを外し、ハンドルを固定することで、中身を取り出す。ハンドルを付け替えると、全体を持ち上げることもできる(ここが設計的に気に入ってるところ)。ノズルは導光のアクリルを支え、アクリルの上にガラス天板をのせる。アクリルの隙間から水が出てくるので、ノズルはほぼ見えない。

アクリルの導光板。削りだしなのでお金かかった。。分割で作ることも検討したがどのみち削り出しであることは変わらないので大きなコスト差がなかったので、一発物で作った。

ノズルが見えない。低反射のガラスも最高。

ノズルはアルミ製。意外とこの形状で問題がない。穴のサイズは試作検討した。

完成

こだわり抜いた結果、すげーのができた。FRPの外装はまるで陶器のような質感で、しびれる。低反射のガラスも正解で、青みも少なくガラス越しでみても水の表情がよくわかる。そして、制御の音が多少あるのだが、それも外装のおかげでかなり目立たなくなる。

本当にいいのができた。設計に時間をかけて、お金もかけ、まったく気を抜かないとこういうのが作れるのかと感動した。

一旦ここで

なんか長くなったのでここで投稿しちゃいます。
次は、パリでの展示の様子とか、その後のこととか書こうかなと思ってます。

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