見出し画像

第3回 BASSDRUM公開総会

ここ数週間、すっかり世界の様相が変わってしまった。私などはニューヨークで生活をしているので、そういう変化の中心地にいると言ってもいい。

今私たちが体験しているのって、言わずもがな、人類の歴史上初めての「インターネットという、空間を超えるインフラがある状態で迎える疫病」だ。

インターネットというものは1990年代の後半にその存在がわりと一般的に知られるようになって、2000年代に入るくらいの頃には、今と全然違う位置づけだった。私の周囲にはインターネットに興奮している人はほとんどいなかったし、インターネット=パソコン通信に盛り上がっている人々=オタクっぽい、くらいの空気感があった。そしてそこで行われているコミュニケーションは、ついにその手段を手に入れた個人たちによる表現・発信が主だった。

そこから20年ほどのインターネットの歴史は、インターネットが「限られた人たち」から「全ての人々」のものに、「暇つぶしのための贅沢品」から「生活に必須のインフラ」に、高速ではあるがゆっくりと変化していった歴史だった。

今私たちが経験している未曾有の状況というのは、インターネットの普及・成長の歴史における「とどめ」として位置づけられるもので、人々の健康上・生活上の理由から、インターネットが完全なライフラインにクラスチェンジせざるを得ないのは間違いない。いずれは教育も選挙も、オンラインになるだろう、インターネットがそのうちそういうレベルのライフラインになるだろう、ということに誰も疑いは持っていなかったと思うが、疫病というやんごとなき事情により、「明日から全部オンラインにするしかありません」みたいなことにいきなりなっちゃっているのが今だ。

私が所属・運営しているBASSDRUMは、最近ちょこちょこ書いているように、デジタルものづくりの技術監督が集まったチームだ。この、すぐにでもデジタルに対応しないといけなくなってしまった状況でお手伝いできることはいろいろある。

ゆえに、会社・コミュニティとしてこの先生き延びられるのかはまた別の話としても、この状態になってからたくさんの方々からたくさんのご相談を頂いていたりはする。

そこで感じるのは、「やらなくちゃいけないこと」「手を入れるべきこと」が世の中にはわんさかあるということだ。

リモートワークの領域にも、教育の領域も、国を運営するシステムも、デジタル的には手つかずなものがたくさんある。私はアメリカに住んでいるぶん、アメリカのほうがデジタル化の進行具合で言うと全然日本より進んでいることを身体で知っていたりもする。日本という場所で急務になっていくことも多い。

で、この、課題がたくさんある、どんどん実現していかなくてはいけない、という状況は、ある種、インターネットがまだまだ贅沢品だった2000年代前半を思い出させる。当時は、ウェブブラウザが主役で、画面の中でできることの可能性を、日々いろんなつくり手たちが進化させ、新しいものを熱にうかされたように発掘していた。ソーシャルメディアを中心としたインターネットの成熟を経て、少しずつそれは冷却されていったが、この「インターネット最後のとどめ」の段階が突然やってきたことで、私たちはそれに対応するべく、すごい勢いでものをつくらなくてはならないという、「やることがたくさんある」状況に再び戻ってきたともいえる。大変な状況では、語弊があるかもしれないが、逆説的に言えば「夢がある」状況であるとも言える。

インターネットは、出現した当時、一部の人々にとって「夢の道具」だった。その頃の夢を実現しよう、みたいな悠長な話ではなくて、「その夢を実現しないと世の中がやばい」という状況が今の状況でもある。やることがたくさんある。

もともと2月に定例的に行うつもりだったBASSDRUMの定期イベントである公開総会は、当然ながらオンラインベースでの配信で開催することになった。いろんな切り口を考えたが、たぶん通底するテーマがあるとすれば「夢のあるデジタルものづくり」だ。

2000年代前半から、夢見るデジタルクリエイターが憧れるトップランナーであり続けている、私自身にとってもこの仕事をやっているきっかけの一人である中村勇吾さんをお招きして、勇吾さんが考えている新しいコミュニティのアイデアのようなものを「こんなのどうでしょう」という体で発表していただくことになった。

映像・演出機材、フォトグラメトリ、プロジェクションマッピングのプロフェッショナルである、BASSDRUMの機材の帝王、高嶋一成さんの話は、ちょこちょこ行っているBASSDRUMの「非公開」総会でも参加者が盛り上がるキラーコンテンツだ。そんな高嶋さんが、これからのデジタルでの表現の可能性を広げる知られざる機材たちを自社倉庫から蔵出しする。

様々な難しい現場をいかに切り抜けたか、を歯に衣着せずプレゼンして、やはり「非公開」総会をいつも盛り上げてくれるMurasaqiさんと、WebGLを用いたリアルタイムCG表現で「デモシーン」を席巻するFMS-catさんは、「若手」みたいな括りではなくて、新しいモチベーションで新しい表現に挑戦している人たち。

そして関西テクニカルディレクターの雄・池田航成さんとBASSDRUMからは、「事業者サイド出身」の市原拓さん、「広告代理店のマーケ出身」の鍜治屋敷圭昭さん、「メーカー出身」の森岡東洋志さんという、出自がぜんぜん違うけど同じ仕事にたどり着いている人たちが、これからの「夢があるデジタル」を担うテクニカルディレクターという職業についてパネルディスカッションする。

各スピーカーと、私も含めた「聞き手」たちは、最後までオンラインで場を共有して、リアルタイムにいじり合いながら、多面的に「夢があるデジタル」の姿を浮き彫りにしていく、と良いなーと思っている。

会場はYouTube Live。前述の通り、スピーカーは聞き手としてずっとオンラインで参加し続けるので、最初から最後まで一緒にお付き合い頂くのが一番楽しいんじゃないかと思う。そこそこ技術っぽい話もあれば、技術者でない方が聴いても参考になるような話は展開されるのだと思う。

スタートはあるのかないのかなんかよくわからない日本のゴールデンウィーク直前の4/28、19:00から。是非、視聴登録・チャンネル登録をよろしくお願い致します。


みんなにも読んでほしいですか?

オススメした記事はフォロワーのタイムラインに表示されます!